翻刻
て姑(しうとめ)を守護(しゆご)し側(かたはら)にゐければ盗賊(とうぞく)ども気強(きづよき)き女(をんな)かなとて打擲(てうちやく)
《割書:まもり| 》 《割書:そば| 》 《割書:うちたゝき| 》
しけれども少(すこ)しもたゆまず釼(つるき)をふりまはしければ賊(ぞく)もたまり
《割書:ぬすびと| 》
かねて逃去(にげさ)りぬ事鎮(ことしづま)りて後家内(のちかない)の人々立帰(ひと〴〵たちかへ)り盧氏(ろし)にむかひ
いひけるは何(なに)とて君独(いみひと)りかく危(あやう)きにゐ給ふといひければ盧氏(ろし)が曰(いわ)
人(ひと)の禽獣(きんじう)と異(こと)なる所(ところ)は仁義有(じんぎある)をもつてなり隣里急難(りんりきうなん)ある時(とき)は
《割書:とりけもの| 》《割書:かわる| 》 《割書:さいしようち| 》
猶(なを)趣(をもむき)救(すく)ふべし況姑(いはんやしうとめ)の身(み)の上(うへ)におゐて何(なん)ぞ危(あやうき)を見捨(みすて)遁(のがる)べきや
《割書:はしりゆき| 》
若万一(もしまんいち)姑(しうとめ)の御身(をんみ)にあやまちあるならばいかにして独(ひと)り生(いき)ながらふ
べきぞと申(もふ)されけるとなりまことに勤労(きんらう)の精粋是(せいすいこれ)に並(なら)ぶべき
《割書:すぐれたる| 》
ものなしとかや
施印
此偏は幼稚行状のあらましを
先生談し玉ふところの口教なり予 竊(ヒソカ)に思ふ
おそらくは忘却し或はやまりあらん事を
故に其ことはを書しるし梓に鏤(チリバメ)ひろく幼稚
に授与する事になりぬよく熟読しよく
記憶しよく勤行せん人もあれかしと是先生
の欲する所なり庶幾(コイネガウ)は幼稚の志を起さん
事をおもひて書するのみ 保教