翻刻
【右項】
とゝ様(さま)かゝ様へ御たづねなさるべく候
これもゆけと仰(をゝ)せられ候 時(とき)は手(て)を御つきなされ参(まいつ)て
さんじましよと御申なされ御 出(いで)なさるべく候御 帰(かへ)りなされ候
ときもまた〳〵手(て)を御つぎ只今(たゞいま)帰(かへ)り候と御申あげ
なさるべく候 御 遊(あそ)びもひさしく外(そと)に御ざらへば親(をや)ご様
御あんじなされ候 間(あゐだ)折(せつ) ゝ(〳〵)御 帰(かへ)りなさるべく候
一御ふたりの親(をや)ご様の仰(をゝ)せられ候事は何事(なにこと)にてもあいと
速(すみやか)に御 返事(へんじ)なされ候てきげんよく仰(をゝ)せ付(つけ)られ候 通(とふり)に
なさるべく候さやうになされ候へば御 成人(せいじん)なさなされ候て後々(のち〳〵)
御 仕合(しあはせ)よろしく候 親(おや)ご様(さま)に御 心(こゝろ)御そむきなされ候
【左項】
かたは後々(のち〳〵)御 不仕合(ふしあはせ)にて難儀(なんぎ)をなされ候
こどもの時(とき)の孝行(こう〳〵)と申 事(こと)は何(なに)も外(ほか)の事(こと)にては御 座(ざ)
なく候 先(まづ)あさおきるより晩(ばん)に寝(ね)るまでとゝ様かゝ様の
仰(をゝせ)ある事(こと)をあい〳〵と御申なされ口(くち)こたへせずとゝさま
かゝさまの御さしづの通(とをり)なされ扨(さて)衣服(きりもの)三度(さんど)の御飯(をめし)御菜(をかず)
髪(かみ)結事(ゆふこと)手水(てうづ)つかふ事 此外(このほか)何(なに)にてもあい〳〵ときげん
よく御 返事(へんじ)なされ親(をや)ごさまの御気(き)にさかはず顔(かほ)つき
をわるふせずかりそめにもなかず朝(あさ)から晩(ばん)まできげん
よくあそびなされまた手(て)ならひよみものに御 出(いで)
なされてじぶんにはとゝ様かゝ様の御 世話(せわ)にならぬ