翻刻
【右項】
やうにてらへゆけよみものせよと仰(をゝ)せられ候はゝ早速(さつそく)
御 出(いで)なされけふは又(また)用事(ようじ)があるやすめと仰(をゝ)せられ
候はゝ御やすみなされとにもかくにも一言(ひとこと)もそむかず
とゝ様(さま)かゝさまの仰(をゝ)せのとふりになされ候が此上(このうへ)
もなき御 孝行(かうこう)にて候さて又おぢい様(さま)おばゝさまは
とゝ様(さま)の又とゝ様かゝさまなればなをもつてだいじに
なされねばならぬことにて御座候
右(みぎ)の事(こと)どもよく〳〵御覚(をほ)へなさるへく候
施印
【左項】
口教(くきやう)二 《割書:これよりはしめ一二三までは先日上けおき|申候其つぎへ御とぢさして取成候》
一何(なに)にかぎらず偽(うそ)をいふたり為(し)たりはなされぬもの
にて候
是(これ)人間第一(にんけんだいいち)のたしなみなり人(ひと)の本心(ほんしん)は正直(しやうぢき)なるが
生(うま)れつきにて候それゆへひ人々(ひと〳〵)すこしにても偽(うそ)を
つくかうい為(する)がいなや忽(あちまち)我(われ)が腹(はら)の中(うち)に急度(きつと)気味(きみ)
わるく覚(おぼ)へがあるなかはづかしくおそろしき事(こと)
なり盗賊(ぬすびと)或(あるひ)は人殺(ひところし)も幼少(ようせう)の時(とき)は同(をな)じ人(ひと)にて
外(ほか)にたねのかわりたるにてはなく皆(みな)此(この)うそをつき
ならひ段々(だん〳〵)上手(じやうづ)になり偽(うそ)のあがりたる者(もの)が一切(いつさい)の悪(あく)