翻刻
【右丁】
/痘(ほうそう)を/防(ふせ)ぎて/入(いれ)ざる/土地(ところ)/多(おほ)し《割書:肥前大村長州|萩其外にも在》/然(しか)れば/防(ふせ)ぎ
/方(かた)さへ/行届(ゆきとゞ)く/時(とき)は/生涯(いつしやう)/病(や)む/㕝(こと)なきもの也/又(また)/痘(ほうそう)を/病(や)ま
ずとて/別(べつ)に/其代(そのかは)りの/病(やまひ)を病(や)むものにあらず/是(こゝ)/以(もつ)て
/所謂(いはゆる)/先天(たいない)の遺毒(どく)には/非(あらざ)る/事(こと)を/知(し)るべし/抑(そも〳〵)/痘((ほうそう)は/人身(からだの)/感(かん)
應力(おうりき)《割書:感應力の㕝病|学通論に/詳(くは)し》と/云(いふ)ものゝ/所為(しわざ)にて/流行痘(はやりほうそう)を/以(もつ)て
/之(これ)に/触(ふる)れば/流行痘(はやりほうそう)となり牛痘(うゑぼうそう)を/以(もつ)て/之(これ)を/誘(さそ)へば/牛痘(うゑぼうそう)
となりて/現(あらは)れ/尽(つく)すものなり/此(この)/感応力(かんおうりき)の潜(かく)れたる/時(とき)は
/幾度(いくたび)/流行痘(はやりぼうそう)に触(ふ)るといへども染(うつ)らず/又(また)/牛痘(うゑぼうそう)にて/導(みちび)け
ども/現(あらは)れず/現(あらは)れずとても/更(べつ)に/害(がい)を/為(な)す/㕝(こと)なきなり
【左丁】
問曰/痘毒(ほうそうのどく)/必(かならず)/軽重(かるしおもし)/多少(おほきすくなき)あるべし/今(いま)の/牛痘(うゑぼうそう)は/毒(どく)の/多少(おほきすくなき)に
かゝはらず/歳(とし)の/少長(わらびおとな)にて/顆数(かず)を/定(さだむ)るは/何故(なにゆゑ)ぞや
答曰/凡(およそ)/毒(どく)の/類(るい)の/人(ひと)を/害(がい)すること/其毒(そのどく)の/多少(おほきすくなき)よりは其
/人(ひとり)の/性質感応力(せうらいかんおうりき)の/力(ちから)によること也/其(その)/徴(せうと)は/先年(まへかた)/屠門(さかなや)に
/入(ゆき)て/河豚(ふぐ)を/食(く)ひたる/者(もの)/六人(ろくにん)あり/各(みな)/其(その)/羮(しる)/二碗(にはい)づゝにて
/其(その)/羮(しる)/尽(なくし)たり/其内(そのうち)/一人(ひとり)は/死(しに)/三人(さんにん)は大(おほき)に/悩(なや)み/二人(ふたり)は/少(すこし)も
/病(やま)ず/其大(そのおほき)に/悩(なや)める/三人(さんにん)も/其(その)/悩(なや)み/方(かた)/少(すこし)づゝ/違(ちがひ)/有(あり)て/一様(ひとやう)
ならざりし也/是(こゝ)にて/毒(どく)の/多少(おほきすくなき)よりは/其人(そのひと)の/感応力(かんおうりき)に
/有(ある)ことを/知(し)るべし/其他(そのほう)/毒虫(どくむし)/毒葯(どくやく)の/害(がい)/病毒(びやうどく)び/患蔫酒(なんぎたばこさけ)の