翻刻
【右丁】
難渋労(なんじうらう)の噂(うはさ)つよく。そこでは
梅干(むめぼし)があたつたの。こゝでは頗稜(ほうれん)
草(さう)が当(あた)ッたのと。聞(きゝ)おぢをする
中(なか)にも。こわい物(もの)は見(み)たしと
やら。物好(ものずき)の若人(わかうど)は。麻疹(はしか)やみは
どんな物(もの)ぞと。見(み)たくさへ思(おも)ふも
あるべし。見(み)た所(ところ)が糸瓜(へちま)の皮(かは)で。
【左丁】
鍋(なべ)の底(しり)を洗(あら)ふたやうな顔色(がんしよく)
なれば。一番煎(いちばんせん)じの薬鍋(くすりなべ)。つま
らぬ物(もの)ではありながら。二十年
ぶりでのはやり物(もの)。めづらしがるも
無理(むり)ではなし。此病(このやまひ)去年(こぞ)の
師走(しはす)の半(なか)ばから。南風(みなみかぜ)に吹(ふ)き
送(おく)り。御当地(ごとうち)みえ初(そ)めて。