翻刻
【右丁】
纔(わづか)に指(ゆび)を折(を)る計(ばか)り。一粒(ひとつぶ)鹿児(がのこ)の
やうなりしが。年(とし)立(たち)かへるあした
より。万歳殿(まんざいどの)がお来(き)やつて。
実(まこと)に目出(めで)たうましんますと。
祝(いは)ふて往(ゆき)し詞(ことば)に違(たが)はず。それ
からそろ〳〵まつちやらこ。あつ
ちらこちらと伝染(でんせん)して。麻疹(ましん)
【左丁】
ます〳〵盛(さかん)なれど。天道様(てんたうさま)のおた
すけにや。昔(むかし)にかはりて世なみよく。
うつくしく出揃(でそろ)ひて。今は板(いた)
〆(じめ)の麻(あさ)の葉(は)の如(ごと)く一 面(めん)になりぬ。
されば御 江都(えど)の繁華(はんくわ)の地方(とち)。
四 里(り)四 方(はう)の其(その)間(あひだ)。爰(こゝ)の門(かど)にも
はしかの妙薬(めうやく)。かしこの裏(うら)にも