翻刻
【右丁】
こうらは又(また)どうしたひまだと。
青息(あをいき)をつくばかり也。さるが中(なか)に。
脈(みやく)の沈(しづ)んだ生薬屋(きぐすりや)は。忽(たちま)ち
息(いき)を吹(ふき)かへし。野巫(やぶ)にも功(こう)の
物(もの)よろこび。沢庵老(たくあんらう)も玄白(げんぱく)殿(どの)も。
兼(かね)てかくやと思(おも)ひしまゝに。
病家(びようか)四方(しはう)に多(おほ)かれば。廻(まは)り
【左丁】
かぬる事 匙(さじ)の如(ごと)く。俄(にはか)に竹輿(かご)に
尻(しり)をいたくす。忘(わす)れたり其中(そのなか)に。
葭町(よしちやう)の色子達(いろこたち)の。今度(こんど)の麻疹(はしか)に
平気(へいき)なるは。信濃守(しなのゝかみ)公行(きんつら)が。ひとり
のがれしたぐひならで。享和(きやうわ)の
流行(りうかう)に相済(あひすみ)たりとおぼしく。
あどけない顔(かほ)はすれど。おとしの