翻刻
【右丁】
といふ家名(いへな)もみえず。やう〳〵
近年(きんねん)半田稲荷(はんだいなり)も鈴振(すゞふ)りが。
疱瘡(はうさう)も軽(かる)い麻疹(はしか)もかるいと。
ひと口(くち)にうたひ出(だ)して。どうやら
痘神(いもがみ)の居候(ゐさふらふ)のやうにはきこ
ゆれど。まだ赤(あか)の飯(めし)にもあり
つかず。醴(あまざけ)もふるまはれず。《振り仮名:木兔|みゝづく》
【左丁】
達磨(だるま)の御伽(おとぎ)もみえねば。さらに
神(かみ)とはいひがたし。もし神(かみ)が在(ある)
物(もの)ならば。廏(うまや)【厩は俗字】の隅(すみ)にたらひをかぶり。
しやがんで居(ゐ)ずとも爰(こゝ)へ出(で)て。
一問答(ひともんだう)いたされよと。渋団扇(しぶうちは)に
あふぎ立(たて)。七厘(しちりん)のかた炭(ずみ)の如(ごと)く
おこりたち。病(やま)ぬはしかに咽(のど)を