翻刻
【右丁】
痛(いた)くし。起(おき)て居(ゐ)て癚語(うはこと)をいふ
つかれにや。薬箱(くすりばこ)を枕(まくら)にして。つい
とろ〳〵と寐(ね)るかと思(おも)へば。土瓶(どびん)の
湯気(ゆげ)どろ〳〵と。立(たち)あがりたる
其中(そのなか)より。怪(け)したる者(もの)こそ顕(あら)はれ
たれ。一(ひと)とせ高麗屋(かうらいや)の親方(おやかた)が。
青面金剛神(せいめんこんがうじん)に份(ふん)じたる顔色(がんしよく)
【左丁】
にて。台所(だいどころ)の板(いた)の間(ま)を。ぎつくりと
一ツきめ。はつたとにらんで謂(いつ)て
いはく。我(われ)は是(これ)其方(そのはう)が無(な)いものと
いふ麻疹(はしか)の神(かみ)也。我(われ)もと西土(さいど)の
えびすより来(きた)りたる神(かみ)なれば。
此(この)日(ひ)の本(もと)の系図(けいづ)たゞしき神々(かみ〴〵)と。
中(なか)〳〵肩(かた)はならべられず。夫(それ)ゆゑ