翻刻
【右丁】
延喜式(えんぎしき)などへは顔出(かほだ)しもならね
ども。邪正(じやしやう)こそはかはりたれ。それも
神(かみ)これも神(かみ)也。何(なん)ぞ麻疹(はしか)に神(かみ)
なしといふべけんや。昔(むかし)阮瞻(げんせん)無鬼(むき)
論(ろん)を執(しつ)す。鬼(おに)来(きた)りてこれと問答(もんだふ)
せり。汝(なんぢ)かし本(ほん)の端(はし)をわづかにみて。
我(わが)ともがらをやすくする事(こと)。野幇(のだい)
【左丁】
間(こ)の江戸 神(がみ)の如(ごと)く。又(また)疱瘡神(はうさうがみ)の
食客(ゐさうらう)とおもへり。はじめにも見え
たるごとく。我(われ)は欽明(きんめい)敏達(びたつ)の
朝(てう)に此地(このち)に渡(わた)り。疱瘡(はうさう)は聖武(しやうむ)の
御宇(ぎよう)にわたり来(き)て。我(われ)から見(み)ては八十
余年(よねん)の新参者(しんざんもの)也。よしや新古(しんこ)の
席論(せきろん)はさし置(おい)て。疱瘡(はうさう)は美目(みめ)定(さだ)め。