翻刻
【右丁】
附子(ふし)《割書:漢|種》
【左丁】
漢種(からたね)の物(もの)真(しん)の附子(ふし)なり二月 生(せう)す葉(は)は石竜芮(せきりうせい)#1《割書:どぶた|からし》に似(に)て厚(あつ)く又 牛扁(きうへん)《割書:れいじん|さう》に似(に)て光沢(つや)
あり茎(くき)肥大(ひたい)にして秋月(あき)高(たか)さ二尺 許(はかり)直立(ちよくりつ)す末(すへ)に花(はな)を開(ひら)く上一弁左右二弁下二弁にて五
弁(へん)色(いろ)深碧(しんへき)なり根(ね)の形(かたち)大にして尖(とか)り少(すくな)く紫芋(しう)《割書:たうの|いも》に似(に)て疙瘩(いほ)あり春(はる)附子(ふし)を栽(うへ)て秋(あき)に至(いたり)
附子(ふし)の傍(かたはら)に附(つき)し子(こ)を附子(ふし)と云 其母(そのはゝ)は烏頭(うつ)となる此(これ)唐種(からたね)の物(もの)を栽(うへ)殖(ふや)して附子(ふし)天雄(てんゆう)川烏(せんう)
頭(つ)等(とう)を採(とり)製(せい)すべし益部方物略記(ゑきふはうもつりやくき)#2に生綿州彰明県(めんしうしやうめいけんにせうする)者 最良(もつともよし)《振り仮名:有_下 一子重及_二 一両_一者_上|いつしおもさいちれうおよふものあり》
花色(くはしよく)紫(むらさき)とある是(これ)なり古今(ここん)ともに毒(とく)を去(さ)るに童便(とうへん)を用(もち)ゆ或(あるい)は薬汁(やくしう)に浸(ひた)し或(あるい)は炮(あふり)種々(しゆ〳〵)
の法(ほう)を用(もちゆ)れとも毒(とく)を去(さる)ことあたわず因(よつ)て舶来(はくらい)の附子(ふし)を重(おもん)す常正 屢(しは〳〵)製(せい)すること多年(たねん)
文政八酉年の秋(あき)唐山(とうさん)のの#3法(ほう)に従(したかつ)て考(かんかへ)製(せい)したるは肉(にく)白色にして白堊(はくあく)の如(こと)く潔白(けつはく)舶来(はくらい)の川(せん)
附(ふ)の如(こと)し是(これ)を用るに舶来(はくらい)の物に異(ことなる)ことなし其方(そのはう)甚(はなはた)容易(やうい)ならす百日(ひやくにち)にして成(な)る天雄(てんゆう)
は承(しやう)曰(いわく)天雄(てんゆう)始(はしめ)種而(うへて)《振り仮名:不_レ生_二附子側子_一|ふしそくしをせうせす》経年(としをへて)独(ひとり)長大者(てうたいなるもの)是(これ)也(なり)と云 説(せつ)に皆(みな)従(したかふ)といへとも
予 数(しは〳〵)多(おほく)附子(ふし)を栽(うへて)試(こゝろ)むに附子(ふし)を栽(うへ)て其秋(そのあき)花実(はなみ)あれは必(かならす)附子(ふし)を生(せう)せすといふこと
なく花(はな)あれは必(かならす)根(ね)空虚(くうきよ)にして腐朽(ふきう)す更(さら)に此理(このり)なし但(たゝ)附子(ふし)の中(なか)にて至(いたつ)て長大(てうたい)なる
を云(いふ)なるべし側子(そくし)は烏頭(うつ)より附子(ふし)を生(せう)じ附子(ふし)より側子(そくし)を生(せう)すると云 説(せつ)妄言(はうけん)#4なり一(いち)
年にて子は生(せう)すれとも孫(まこ)は生(せう)せす此理(このり)なし即(すなは)ち附子(ふし)の小(せう)なるものなり漏藍子(ろうらんし)#5は此(これ)亦(また)
側子(そくし)より小(せう)にして藍(かこ)#5より漏(もる)ものなり
【版心の中央】川烏頭