翻刻
【右丁】
居尻(いしり)取替(とりかへ)んと思(おも)はゞ前日(ぜんじつ)の夜(よ)桑(くわ)喰(くわ)す前(まへ)にかの微(こまか)なるすりぬか
を蚕(かいこ)の上にぱら〳〵とむらなく能(よ)き程(ほど)に薄(うす)くふりかけて直(すぐ)に桑(くわ)の
切粉(きりこ)をふりかけ加減(かげん)よく喰(くわ)すべし斯(かく)する時(とき)は蚕(かいこ)ぬかを嫌(きら)い上えぬ
け出(いで)桑(くわ)え這(はい)い#1上(あが)るなり但(たゞ)し餘(あま)り厚(あつ)くぬかをふれば蚕(かいこ)ぬかの下(した)に
すくみゐて上(うへ)え出(いで)ず加減(かげん)あり又その日の朝(あさ)桑(くわ)を喰(くわ)せ少(すこ)し間(ま)を
置(おき)二度 喰(くわ)せ居尻(いしり)取(とり)かゆべし器(いれもの)を少(すこ)し傾(かたむ)け器(いれもの)のすみより羽(はね)に
て蚕(かいこ)をまくり取(とり)外(ほか)なる器(いれもの)え入替(いれかへ)べし此 尻(しり)がへの時(とき)是迄(これまで)器(いれもの)の中(なか)に
居(い)たりし蚕(かいこ)は今度(こんど)は縁通(ふちとをり)に置(おき)今迄(いままで)縁通(ふちとをり)に居(い)しは此度(このたび)中通(なかとをり)に
置(おく)べし是(これ)は器(いれもの)の中(なか)と縁(へり)と纔(わづか)ながらも寒暖(かんだん)の違(ちが)いある故(ゆゑ)に蚕(かいこ)を
一様(いちよう)に揃(そろへ)んが為(ため)斯(かく)のごとく座(ざ)を入替置(いれかへおく)なり尤(もつとも)すりぬかつかひ
【左丁】
加減(かげん)よくすれば尻(しり)がへに早(はや)く奇妙(きめう)の仕方(しかた)なり此 尻替(しりがへ)の時(とき)椹(ふなべ|くわのはな)を喰(くわ)す
ならば三 度(ど)喰(くわ)せて後(のち)居尻(いしり)取替(とりかへ)てよし又(また)桑葉(くわは)ならば二 度(ど)喰(くわ)せて後(のち)
居(い)うら取替(とりかへ)てよし始終(しじう)獅子(しし)の居起(いおき)より舩(ふな)の起(おき)まで居尻(いしり)取替(とりかゆ)る
度毎(たびごと)にすりぬか遣(つか)ふべし遣(つか)い加減(かげん)前(まへ)のごとし此通(このとをり)にして尻替(しりがへ)すれば
至極(しごく)早(はや)く蚕(かいこ)跡(あと)にも強(しい)て残(のこら)ず妙(めう)なり但(たゞ)し蚕(かいこ)の變(へん)は夜(よる)四 時(どき)より
朝(あさ)五ッ時過(ときすぎ)までの寒(さむ)さにありと知(しる)べし此 時(とき)陽気(ようき)に随(したが)い火(ひ)も少(すこ)しは
焼(たく)べし然(しか)し火(ひ)は焼(たき)かげんにて蚕(かいこ)に薬(くすり)ともなり又 毒(どく)ともなるべし又 炭火(すみひ)は
宜(よろ)しからず諺(ことわざ)にも春蚕(はるご)は煙(けむり)で飼(か)へ夏蚕(なつご)は風(かぜ)で飼(か)へというは急速(すはやく)
温(あたゝめる)には焚火(たきび)かよし寛々(ゆる〳〵)少 暖(あたゝめ)るは炭(すみ)火かよし此時寒暖計を見て
陽気(ようき)は前(まへ)にいうごとく常(つね)に我身(わがみ)袷(あわせ)にて能(よ)き程(ほど)にすべし戸(と)の透(すき)は
【右丁上段】
ぬかなき所は
冬(ふゆ)の月 霜枯(しもがれ)
たる桑葉を
扮集(かきあつめ)■干て揉(もみ)
碎(くだ)き是を段
〳〵(だん)篩分(ふるいわけ)て土(つち)
砂(すな)を去(さ)りて
遣うべし》
【左丁上段】
予が家にては。四五日
目の居尻替(いじりかへ)より
鷹の起迄の間 木(も)
綿糸(めんいと)にて一分半二
分四方の目の尺巾(しやくはゞ)
の布(ぬの)を織(おり)り#2切々にして》
数多く拵置 器(うつわ)の
中へ二枚又は三枚 置並(をきならべ)
上に桑を二度掛別
の器へ移(うつ)す時は