翻刻
【右丁】
ことを知(し)らずもし晴天(せいてん)續(つゞ)き蚕下(こした)からびる程(ほど)乾過(かわきすぎ)る時は
潤(うるほ)ひの十分 有(あ)る桑(くは)を常(つね)よりも荒(あら)く刻(きざみ)て両度程 厚(あつ)く
養(か)へば蚕下(こした)に喰(く)ひ残(のこ)りの青葉(あをば)溜(たま)りて虫(むし)傷(いた)まず猶(なを)ほめく
時(とき)は昼夜(ちうや)とも数度(すど)桑(くわ)を や( |与)り四方の戸を明(あ)けまだ暑気(しよき)
甚(はなはだ)しくば柱(はしら)板(いた)の間(ま)長押(なげし)などびしよ〳〵の濡雑巾(ぬれざうきん)にて度々
ふき乾(かは)けば又ふき〳〵して暑気(しよき)を涼(さま)すべし此時は青葉(あをば)有(あり)
とも蚕(かひこ)乗(の)り桑(くは)を平(たいら)に踏(ふみ)付たる時は潤(うるほ)ひ有(あ)る桑(くは)を新(あら)たに
与(あた)へ桑(くは)の切口(きりくち)真(ま)さに立(たち)たるを喰(く)ふやうにすべし是は國々本場
の蚕師(かいこし)名(めい)人の傳なり。
○雨(う)天にて冷気(れいき)なれば桑(くは)を喰(くは)ず此時は蚕(かいこ)に桑(くは)を与(あた)へて直(すぐ)に
【左丁】
火を焚(たく)べし煙(けふり)は天 井(ぜう)へ穴(あな)を開(あ)けて除(ぬく)べし焚(たき)火は蚕(かひこ)に桑(くは)を進(すゝま)せ
又 湿気(しつけ)を除(さ)る為(ため)なれば未(ま)だ喰餘(くひあま)りの桑(くは)有内に戸を開(あ)け気(き)を
拂(はら)ふべし蚕の空腹(くうふく)なる所へ焚(たき)火は毒(どく)也度々 蒸気(ぜうき)は拂(はらひ)陽気(やうき)を
入替べし
○初中後四度の休前(やすみまへ)上り前(まへ)とも喰盛(くひさかり)の時 桑飼(くはか)ひ責桑(せめくは)不足(ふそく)し時日(じゝつ)
遅(おく)れになる時は季候(きこう)により少しは喰不足(くひふそく)にても並(なら)ぶ故に庭(には)の並(ならび)は別て
起縮(おきちゞみ)と云 病(やまひ)出来桑に喰付(くひつか)ず起色(おきいろ)直(なをら)ずして終(つゐ)にのたり死(し)す故に喰盛(くひさかり)
と責桑(せめくは)は十分に与(あた)ふべし
○厚蚕種(あつこたね)一枚を一尺四方の十六坪に掃卸(はきおろ)し四五日目には蚕下(こした)ともに
すくひ取虫の傷(いたま)ぬやうに手心にてもみほごし別(べつ)の器(いれもの)へ三 倍(ばい)に廣(ひろげ)べし舩蚕(ふなこ)