翻刻
【右丁】
附言(つけていふ)
一/此書(このしよ)素(もと)より女(をんな)子(こ)どもにも早(はや)く会得(わかる)為(ため)にすなれば文(ぶん)を潤色(かざら)ず
常(つね)にいひ馴(なれ)聞(きゝ)やすきを宗(むね)とし字音(じをん)にいひ馴(なれ)たるは字音(じをん)和語(わご)に聞(きゝ)
なれたるは和俗(わぞく)を用(もち)ゆ且(かつ)助(す)け国字(かな)附国字(つけがな)ともいひゐ。ろつ。は
わほを。へえ。うふ。の類(るい)仮字(かな)の本格(ほんかく)を用(もちい)ず只管(ひたすら)童(こども)にも読(よめ)
易(やす)く聞取(きゝとり)安(やすき)に従(したが)ふ見(み)る人(ひと)実業(じつげう)の手段(しゆだん)を取(とり)て文(ぶん)の拙(つたな)きを
尤(とが)め給ふ勿(な)
【左丁】
○前文に洩(もれ)たるを爰に挙(あ)げ記す。匂(にほ)ひ袋(ぶくろ)懐中(くわいちう)の人蚕の側(そば)へ寄(よる)べからず麝香(じやかう)。樟(しやう)
脳(のう)。薫陸(くんろく)。蕃枡(たうがらし)を焼(やけ)ば忽(たちま)ち青き泡(あは)を吐(はき)死(し)す。太/皷(こ)。法螺(ほらがい)。鐘(かね)の音大/毒(どく)也又/簀(す)
の子(こ)板の間(ま)人足/繁(しげ)く荒(あら)く踏(ふむ)所は桒/喰(くひ)悪(わろ)く日数延る也
○掃(はき)落しの頃/粟(あは)稗(ひゑ)のぬかを遣ふ所あれど是は軽くして丸く居(すわ)りあしく這(はひ)上るに
転(ころ)びて埒(らち)あかず又/冠(かむ)りて獅子舞(ししまひ)をして蚕/労(つかれ)てわろし再摺(にどずり)の籾(もみ)ぬかには甚だ劣(おと)る
糠(ぬか)無き所は冬の月霜/枯(がれ)たる桒葉を掃集(かきあつ)め干て揉碎(もみくだ)き是を段々と篩(ふるひ)分て
土砂(つちすな)を去りて遣ふべし
○蚕/掃(はき)落して獅子(しし)の居起(いおき)前後(ぜんご)迄の居尻(こじり)取替(とりかへ)に木綿糸にて一分より二分四方の
目の尺巾の布を織(をり)て器(いれもの)に随ひ切〳〵にして中へ二枚三枚も置並べ其上に桒を二度かけ
別の器(いれもの)へ移(うつ)す時は内外/振替(ふりかへ)て置也此/網(あみ)を用れば日蚕尻(ひごしり)を取替とも少も苦(く)にならず