翻刻
なすをもつてしかいふなるべし其国の|土俗(どぞく)も上|州(しう)にてたとへば|妙(みやう)
|義(ぎ)|榛名(はるな)|赤城(あかぎ)等の山〳〵より出る雷に|強弱(きやうじやく)ありと云|野州(やしう)|日光(につくはう)
山|武州(ぶしう)|秩父(ちゝぶ)山等其|雷(らい)の出る山にて|剛柔(ごうじう)をいふもの少からす山の
大小|高卑(かうひ)によつて雲を|発(はつ)するの|厚薄(こうはく)あらんはさもあるべし
|雷(らい)山に|住(ぢう)して雲に|乗(じやう)じて出ると思へるは|誤(あやま)れり
○|電(いなびかり)
問て云|電(いなびかり)は|雷(らい)に先達て|光明(ぐはうめい)を|閃(ひらめか)し又は|黄昏(くはうこん)から夜に至(いたつ)
て|雷(らい)なくしてあるひは|北(きた)にあり又は南にあり是も又|夏月(かげつ)
多し何によつて光を|発(はな)つや
答て云|電(いなびかり)も又|雷(らい)と理を|同(おなじう)す夏月|蒸升(しやう〴〵)する所の|土(ど)
|湿(しつ)の気|陽(よう)をつきのぼりて雲中に入|火気(くわき)雲を|切(きしり)たかいに
|磨(すり)盪(おし?)|陰陽(ゐんよう)激し|雷(らい)となる其火気|迸(ほどはしり)あわるゝものを|電(でん)
光とす光に|継(つい)で来る雷は其|勢(いきほ)ひ|強(つよ)し又つねに|夏月(かけつ)|昏(くれ)
より光るものも理同じといへと又少し|異(こと)也|雷(らい)の|電光(でんくはう)の
|尖(するど)なるがごとくにあらず是は陽の|勝比(かつころ)ゆへおのれが|質(しつ)をあらわ
して|昼夜(ちうや)に|限(かぎ)らず折にふれて|燥熱(そうねつ)の気を|発(はつ)して|空(そら)
に|閃(ひらめく)昼は日|光(くはう)の為にみへず日|没(ぼつ)して|黄昏(たそがれ)よりは|光(ひかり)みゆる也
|曇天(どんてん)には|雨湿(うしつ)の|気(き)みち|掩(おほ)ふゆへに|電光(でんくわう)なし|雷鳴(らいめい)の時
は|曇雨(どんう)の|差別(しゃべつ)なく光をはなちあらわす是|陽(よう)の|凝(こ)るもの
甚しければなり
○地震(ぢしん)
問て云地は天の|中(ちう)に|居(きよ)して|永静不動(えいせいふどう)也としるに|地震(ぢしん)その
多少あつて其つよきものは家を|倒(たを)し地を|裂(さき)あるひは|郷村(ごうそん)
を|陥(おとしい)れ山を|崩(くづ)し海中|俄(にわか)に|一小嶋(いつせうとう)を|涌出(ゆしゆつ)するがごとき頗 (すこぶる)
|奇怪(きくわい)なりまた云|地底(ちてい)に大|鯰魚(ねんぎよ)【左・なまず】あつて国土を|周回(しうくわい)す時有
て|鰭(ひれ)を動かす時多少にしたがつて地|震(ふる)ふ其|首尾(しゆび)を|合(がつ)