翻刻
其国を周回(しうくわい)すべきや然らば要(かなめ)石もみ国に一ッ宛(づヽ)有べし
○震動(しんどう)
問て云|地震(ぢしん)の以前(いぜん)に地中|軣(とゞろ)き鳴声(めいせい)あるを震動(しんどう)と云又地震
なくして震動のみにて止(やむ)もの有此理はいかん
答て云|震動(しんどう)といふこと俗言(ぞくげん)のみにしてともに地震(ぢしん)也ふるいうご
くと書(かけ)る文字(もんじ)なれば別(べつ)に其|名目(めいもく)あるべきいわれなし但し
地|震(ふるわ)んとしてとヾろくものは他方(たほう)に多く震(ふる)ひとヾろき来て
此方に震(ふるふ)もの有又此地|震(ふるわ)んとして地中に気(き)を軣(とゞろか)すもの有
然る時は地|震(しん)強(つよ)し又地のみ鳴軣(なりとゞろ)きて震(ふる)ひ揺(うごか)ざるもあり
是|他方(たほう)の地|震(しん)の鳴声(めいせい)を聞(きく)のみなる有又此方の土中(どちう)軣(とゞろ)き
震(ふる)ふにおよばずして其気|発(はつ)してやむものあり是|雷鳴(らいめい)の時
の雷(いなひかり)の理に同くして雷(いなびかり)あつて雷(らい)なきがごとしすへて雷(らい)
地震(ぢしん)ともみ国地にしたがつて異同有たとへば頭上(づじやう)に北|極(きよく)
をいたヾく国のごときは日|輪(りん)の陽気(ようき)遠く寒(かん)悪しきゆへ地|震(しん)
も雷(らい)も少〳〵|赤道(しゃくどう)の下にあたる地は太陽(たいよう)の燥熱(そうねつ)勝(かつ)がゆへに
散(さん)じやすく地震少〳〵と云又地の理|土砂(どしゃ)の地|泥土(でいど)の地
のごときは地震少〳〵|多石(たせき)の地と穿穴(くうけつ)あるの地は震(しん)多し
かならずしも土地|通(つう)じて震(ふる)ふの理なし各所(かくしょ)各気(かくき)各動(かくどう)
とておの〳〵其|土地(とち)の気に応(おう)じ下伏(かふく)突発(とつはつ)の気ある所
にしたがつて震(ふる)ひうごくゆへに十里廿里に過(すぐ)るものなし
又地に鳴声(めいせい)あるものを震動(しんどう)と答へるは誤(あやま)れり
○温泉(おんせん)
問て云|温泉(おんせん)は金石(きんせき)硫黄(いわう)の気にふれて出ると和漢諸家に
あり是に浴(よく)して病を療(りやう)じ瘡(かさ)を癒(いや)すの益(えき)ありしかるに金石
硫黄(いわう)何(なに)ゆへ火物(くわぶつ)にして温泉(おんせん)を出すや
答て云地中又|自然(しぜん)の火気(くはき)あり又|上(かみ)よりして日|陽(よう)地を照(てら)