翻刻
答て云|雲(くも)は|水気(すいき)也
其かゝる所天にては甚
|低(ひく)し|陰湿(ゐんしつ)の|気(き)|太陽(たいよう)
の為に|蒸升(むしのぼ)されたるが
風に|吹乱(ふきみだ)されて|中天(なかぞら)に
靆(たなびく)もの也雲の山より
起升(たちのぼ)る理は山は諸|木(ぼく)
多(おゝ)く地の水気を|頂(てう)
上(じやう)に|吸(すい)あつむるゆへに
陰湿(ゐんしつ)|甚(はなはだ)|深(ふか)し|太陽(たいよう)に
照(てら)され|湿(しつ)を|蒸升(むしのぼ)す
こと|湯気(ゆげ)の立ごとし|湯気(ゆげ)|升(のぼつ)て|露(つゆ)をとゞむれ共|元来(ぐわんらい)水気ゆへ
隕降(おちくだ)るの理あり|地気(ちき)|上(のぼつ)て雲となり其気|重(かさな)る時は|散(さん)じて
雨となり|降(ふる)も理|相同(あいおな)じ雲|起升(たちのぼ)れ共其水気の|厚薄(こうはく)
によつて|或(あるひ)は風となり又は大小の雨となる海上に|船夫(せんふ)|舵(だ)【舵の左ルビ「かぢ」】
師(し)【師の左ルビ「とり」】の|輩(ともがら)雲の升(のぼ)るを見て風を|占(うらなふ)も此理也すべて日は高く
雲は甚ひくきゆへに此地は曇(くもり)又は雨あれどもわづか数里
をたがへば|快晴(くわいせひ)なるもありと也
〇雲に|種々(さま〳〵)の色(いろ)を現(あらは)す
問て云雲は水気なりと然るに雲に彩色(さいしき)を現(げん)じ或(あるひ)は白(しろ)く
又は黒(くろき)あり就中(なかんづく)|紫雲(しうん)|慶雲(けいうん)をもつて|祥瑞(しやうずい)とす何に
よつて色(いろ)をあらわすや
答て云雲に色をあらわすはこと〴〵く日|陽(よう)の|照耀(ひかり)をうくると
雲気(うんき)の厚薄(こうはく)とによつて種品(さま〴〵)の色をなす|或(あるひ)は又気といふ
もの有|雲(くも)に似(に)て雲にあらず其気内|赤(あか)く外|黄(き)にして
潤沢(じゆんたく)日をかゞやかすものは王者(わうしや)起(おこ)るの|瑞(ずい)など云は|所謂(いわゆる)慶雲(けいうん)
【挿絵中】
山の水|湿(しつ)を|蒸(むし)升して
雲となり
天の雲
水の気
散じて雨
となる