翻刻
の|類(るひ)にして|都(すべ)て此気を|望(のぞミ)見て其|兆(てう)をうしなふを|望気(ぼうき)と云是を
雲気(うんき)を見るなどゝ云也
〇山より|煙(けふり)の起(たつ)
問て云雲の山より起(おこる)
ハ水|湿(しつ)の気を|蒸升(むしのぼ)
すゆへ也と然るに|信州(しんしう)
浅間岳(あさまだけ)のごとく煙(けふり)立|登(のぼり)
てつねに焼(やく)る山々諸国
にあり何によつて焼
るや
答て云|諸木(しよぼく)ある山ハ
土中(どちう)の水気を吸升(すいのぼ)
せて湿(しつ)ふかしといへ共
樹(き)もなき兀山(はげやま)ハ水気(すいき)さらになく却(かゑつ)て高き地ハ燥(かわ)くなり
燥土(そうど)の気|下(しも)なる地中の水気に激発(げきはつ)セられ陽(よう)上に凝(こつ)て
炎(ほのふ)を生(しやう)じ燃(もゆ)る也此|故(ゆへ)に山の中覆(ちうふく)までも樹のある山是
上はもゆれ共|中覆(ちうふく)は雲を出す|駿州(すんしう)|富士(ふじ)の類(るひ)是也
〇|霞(かすミ)
問て云|春(はる)は四方の山々|霞(かすみ)|棚引(たなびき)て諸木(しよぼく)の花も融色(ゆうしよく)を含(ふく)ミ
遠山(ゑんざん)の色(いろ)もおのづから長閑(のどか)なり此|霞(かすミ)ハ雲(くも)にあるべからず
何ものぞ
答て云|霞(かすミ)は雲の日光(につくハう)を借(かつ)て色(いろ)を変(へん)ずるもの也雲|日(ひ)の
光を正(たゞ)しくうつればしらけ朝夕(あさゆふ)|日光(につくハう)を斜(なゝめ)にうけて彩(さひ)(いろどり)
を生(しやう)ずこれしかしなから寒暑(かんしよ)の候(こう)|日気(につき)の厚薄(こうはく)によつて
象彩(しやうさひ)異(こと)也|春(はる)融和(ゆうくわ)の日光(につくハう)を斜(なゝめ)にうけて雲(くも)朝霞(あさがすミ)と靆(たなひく)夕(ゆふ)
べに山を覆(おほ)ふ其|候(こう)によつて然るもの也又|春月(しゆんげつ)地気(ちき)
【下図】
高山|樹(き)なきは
常に燥(かわ)く甚
しきは燃(もゆ)る也