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コレクション: STAGE9

永代惨話 文化の夢 全 - 翻刻

永代惨話 文化の夢 全 - ページ 10

ページ: 10

翻刻

きに遁(のが)れ去(さ)る者(もの)は、皆々(みな〳〵)橋(はし)の方(かた)へ奔(はし)り候に此方(こなた)からも押(おし) かゝりて、双方(さうほう)の人数(にんず)橋上(はしうへ)に充満(じゆうまん)する時(とき)、東(ひがし)の橋詰(はしづめ)より、僅(わづ) か二間程|残(のこ)して竪(たて)十二間|程(ほと)、二(ふたツ)に折(お)れて落(を)ちたりけるに 之(これ)を知(し)らざる幾万(いくまん)といふ人々(ひと〳〵)は、尚(なほ)跡(あと)より〳〵、押(おし)かけ押(おし) かけいたし、前(まへ)の者(もの)漸(やうや)く之(これ)を知(しツ)て、《割書:ヤ | レ》橋(はし)が落(おち)たぞ、橋(はし)が落(おち)た ぞと呼(よは)はり候へども更(さら)に聞(きゝ)入(い)るゝ者(もの)なく或(あるひ)は耳(みゝ)に入(いり)候(そろ) 者(もの)も、偽(いつはり)ならんと思(おも)ひ切(きつ)て強(つよ)く跡(あと)より押(おし)かけ候 勢(いきほ)ひにて 又〻(また〳〵)中程(なかぽど)が落(を)ちしと見(み)へ、此時(このとき)少(すこ)しは東(ひがし)の方(かた)に逃(のが)れ戻(もど)る 者(もの)も有之候らひし、斯(かゝ)る騒動(さうどう)ゆゑ水中(すいちう)に陥(おちい)らざる陸上(をか)の 者(もの)と雖(いへと)も、多少(たせう)の怪我(けが)を致(いた)し候 者(もの)不少(すくなからず)候 由(よし)、此時(このとき)何国(いづく)の武(ぶ) 士(し)にや落(を)ち残(のこ)りたる橋桁(はしげた)の端(はし)に踏(ふ)み留(とゝ)まりて刀(かたな)を抜(ぬ)き 振廻(ふりまは)したるにぞ、之(これ)を見(み)る者(もの)は、橋(はし)の落(を)ちたる事(こと)を知(し)らず  して夫(そ)れ狂人(きちがひ)よ、喧嘩(けんくわ)ありと、或(あるひ)は戒(いまし)めて、跡(あと)へ引(ひつ) かへしたる者(もの)も、最(い)も夥多(あまた)有之候らひし由(よし)   今左(いまさ)に人数(にんず)の大積(おほづも)りを、橋上(はしうへ)の坪数(つぼかず)にていたし候へば  大略(たいりやく)斯(こ)の如(ごと)くに候へども此他(このほか)尚押落(なほおしをと)され候 者(もの)の数(かず)は  更(さら)に何程(なにほど)なるや、一 向(かふ)に算当(さんどう)相立(あひたち)不申候  橋《割書:竪十二間|巾四間程》 此坪数四十八坪。一坪に老若(らうにやく)二十人 詰(づめ)とせ ば、凡(をよ)そ九百六十人なり  又(また)右(みぎ)の量方(めかた)一人を十 貫目(くわんめ)平均(へいきん)と積(つも)れば凡(をよ)そ九千六百 貫(くわん) 目(め)なり  十九日午 九(こゝの)ツ時頃(どきごろ)より佃嶋猟師町(つくだじまれうしまち)の者(もの)に仰(おほ)せ付(つけ)られ、縄網(なはあみ) を以(もつ)て地引(ぢびき)を致(いた)させ候所、忽(たちま)ち百人余(ひやくにんあま)りも、死骸揚(しがいあが)り申候 由(よし)同日(どうじつ)は終夜(しふや)揚(あ)げしと承(うけたまは)り候(そろ)、