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コレクション: STAGE9

永代惨話 文化の夢 全 - 翻刻

永代惨話 文化の夢 全 - ページ 42

ページ: 42

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叫(さけ)びけるに、何(いづ)れがその妹(いもうと)やら知(し)れ兼(かね)るれど、いふがまゝに 今一人(いまひとり)の女子(をなご)を助(たす)け来(きた)れば、此(これ)ぞ、そが妹(いもと)にてありしと姉妹(きやうだい) の喜(よろこ)び果(はた)して如何(いか)がありし此(こ)の女子(ちよし)は浅草辺(あさくさへん)に住(す)める者(もの) なりしといふ(四谷内藤新宿の住六樹園の記録)   ○七才の児双親(こふたおや)を救(すく)ふ 芝片門前町(しばかたもんぜんちやう)一丁目に住(す)める唐紙師(からかみし)、石田喜八(いしだきはち)なる者夫婦(ものふうふ)し て今年(ことし)七才になる息子(むすこ)を連(つ)れ、祭見(まつりみ)に出(いで)たりけるが、不図橋(ふとはし) 上(うへ)にて我子(わかこ)を見失(みうしな)ひたれば恰(さなか)ら狂気(きやうき)したるが如(ごと)く群集(ぐんしふ)の 中(なか)を押分(おしわ)けて尋(たづ)ね求(もと)むれども更(さら)に行方(ゆくゑ)のしれざりければ 若(も)しや子供(こども)の足早(あしはや)くも、向(むか)ふへ渡(わた)りしならんと、夫婦共(ふうふとも)に橋(はし) の彼方(かなた)に至(いた)り尚我子(なほわかこ)を尋(たづ)ね求(もと)むる中橋落(うちはしを)ちたりければ、其(その) 子(こ)は空(むな)しく水中(すいちう)に陥(おちい)りて死(しゝ)たりしかども、二人(ふたり)の命(いのち)には別(べつ) 條(でう)なかりしといふ(右揚柳亭の記録)   ○泡影無幼 浅草(あさくさ)の片辺(かたほと)りに些(さゞ)やかなる小屋(こいへ)を作(つく)りて住(す)みける繁八(しげはち)と いふ一人(ひとり)の非人(ひにん)あり、これも橋落(はしをち)し時水中(ときすいちう)に陥(をちい)りしが幸 にして能(よ)く泳(をよ)ぐ事(こと)を心得居(こゝろゑゐ)たるものから、抜手(ぬきで)を切(き)ツて岸(きし) の方(かた)に泳(をよ)ぎ揚(あが)らんとしける時(とき)、十二三才|計(ばか)りの童子其頭(どうじそのあたま)に 付縋(つきすが)りて助(たす)け呉(く)れといひけるに、繁八(しげはち)は諾(うけが)ひて能(よ)くつかま り居(ゐ)よといふ中(うち)、又(また)も七才ばかりなる子童(こども)、流(なが)れ来(きた)りて取付(とりつ) きければ、これも幼(をさな)き者故不憫(ものゆゑふびん)に思(おも)ひ、助(たす)けやらんと二人(ふたり)の 子童(こども)を身(み)につけて泳(をよ)ぎける中(うち)、漸々大勢(だん〳〵おほぜい)に取付(とりつ)かれて、今(いま)は 我(わ)が一命(いちめい)さへも最(い)と危(あや)ふくなりけるに繁八(しげはち)少(すこ)しも屈(くつ)せず 尚死力(なほしりよく)を尽(つく)して漸々(やう〳〵)に彼(か)の二人(ふたり)の子童(こども)をば岸(きし)の辺(ほと)りまで