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コレクション: STAGE9

永代惨話 文化の夢 全 - 翻刻

永代惨話 文化の夢 全 - ページ 48

ページ: 48

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発(はつ)せしといふ(右理老漁の記録)   ○発狂人(はツきやうじん) 神田辺(かんだへん)に住(す)める者(もの)なりとか、或一人(あるひとり)の男此日泥(おとここのひどろ)まぶれにな りて橋向(はしむか)ふを狂(くる)ひ歩(ある)きけるに、知(し)る者引留(ものひきと)めて貴様(きさま)は何故(なにゆゑ) 斯(か)く狂(くる)ひ歩(ある)くぞと問(と)へば、其男答(そのおとここた)へて我(われ)は一旦入水(いつたんじゆすい)して娑(しや) 婆(ば)の岸(きし)をば離(はな)れし者(もの)なり、此処(こゝ)は未来(みらい)の何(なん)といふ町(まち)にして 又三途(またさんづ)の川(かは)とやら云(い)ふは矢張(やは)り苦(くる)しき思(おも)ひして泳(をよ)がねば 行(ゆか)れぬにやと尋(たつ)ねしといふ(右蜷川某が記録)   ○陰往(いんわう)の陽報(やうほう) 本郷一丁目(ほんがういツてうめ)に住(す)める伊勢屋嘉兵衛(いせやかへゑ)といふ者(もの)は、常〻(つね〳〵)神仏(しんぶつ)を 信仰(しんかう)して慈善深(じぜんふか)き者(もの)なりしるが、此日亭主嘉兵衛(このひていしゆかへゑ)は六十に 余(あま)る姑(しうと)と十三才に十才の兄弟(けうだい)の子供(こども)を連(つ)れ四人(よにん)にて祭見(まつりみ) に出(いで)たりけるが、橋落(はしをち)し時皆水(ときみなみづ)に陥(をちい)りたれど、更(さら)に一人(ひとり)も怪(け) 我(が)したる者(もの)なく、皆〻(みな〳〵)無事(ぶじ)にて家(いへ)にかへりしといふ   ○竹笠(たけがさ)の舟(ふね) 今川橋(いまがはばし)の辺(ほとり)に山吹(やまぶき)といへる水茶屋(みつちやや)あり、其(そ)が亭主常(ていしゆつね)に我(わ)が 家(いへ)に来(きた)る《割書:(編者曰我か家とは|筆記者の家ならん)》浄玄(じやうげん)といふ斎坊主(とぎばうづ)に語(かた)りて言(い) ひしには、昨日永代橋(きのふゑいたいばし)の下(した)にて、六|歳(さい)ばかりなる女子(をなご)の大(おほひ)な る竹(たけ)の小笠(こがさ)にすがりて流(なが)れゆく者(もの)を助(たす)けやりしが、何(いつ)れの 者(もの)なりしにやと(右二話文實亭の記   ○溺水人(できすいにん)を救(すく)ふの心得(こゝろゑ) 或人水(あるひとみづ)に溺(をぼ)れたる人(ひと)を助(たす)け揚(あげ)んとしたりしに、大勢(おほぜい)の者(もの)よ り取付(とりつ)かれ、それが為(た)め其身(そのみ)も空(むな)しく溺(おぼ)れて死(し)したりとい ふ