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コレクション: STAGE1

塩原繁昌記 全 - 翻刻

塩原繁昌記 全 - ページ 31

ページ: 31

翻刻

天秤(てんびん)を肩(かた)にする商人(あきひと)も利潤(りじゅん)の餘(あま)りあれば 湯(ゆ)に入(い)り一|合(がう)の徳利(とくり)を傾(かたむ)けて数日(すじつ)の勞(らう)を 慰(なぐさ)む此處(こゝ)に溪山(けいざん)の勝(しやう)を談(だん)する雅客(がかく)あれば 彼處(かしこ)に賣買(ばい〳〵)の利(り)を説(と)く商賈(しやうこ)あり或(あるひ)は紅粉(かうふん) を携(たつさ)ひたる冨人(ふじん)あり或(あるひ)は温液(おんえき)を譽(なめ)る患者(くわんじゃ) あり雅俗患楽(がぞくくわんらく)樓(ろう)に満(みち)て其(その)繁昌(はんじょう)云(いわ)ん方(かた)なし 此(この)山中(さんちゅう)昨日(きのふ)の寂寥(せきりやう)に引換(ひきか)へ無比(むひ)の盛況(せいけふ)を 見(み)るに至(いた)るは亦(また)千歳(せんざい)の一|遇(ぐう)と云(い)ふへし ○中塩原(なかしほばら) 中塩原(なかしほばら)は古町(ふるまち)より續(つヾ)く本道(ほんどう)なり 中上(なかかみ)の両村(りやうそん)には温泉(おんせん)の所在(しょざい)無(な)く民家(みんか)も山(さん) 腹(ふく)山趾(さんし)に散在(さんざい)し農業(のうげふ)を務(つと)め獣猟(じうりゃう)を為(なし)て生(せい) 計(けい)を營(いとな)めり入口(いりくち)なる川(かは)の北岸(ほくがん)に孤山(こざん)あり 峰頭(ほうとう)に松樹鬱々(しやうじゅうつ〳〵)として翠(みとり)を重(かさ)ねたり古(いにし)へ 塩原八郎家忠(しほばらはちろういへたヽ)と云者(いふもの)か居館(きよくわん)せる趾(あと)なりと 左(ひたり)の森(もり)は八幡宮(はちまんぐう)の社内(しやない)なり建久(けんきう) 昔(むかし)伊豆(いつの) 冠者(くわんじゃ)有綱(ありつな)か勧請(くわんじやう)する所(ところ)なるか後(のち)嘉吉(かきつ)元年(くわんねん)                    【修復による不鮮明な箇所あり】