翻刻
君嶋信濃守(きみしましなのヽかみ)再興(さいかう)して弓矢(ゆみや)の神(かみ)と仰(あほ)く今猶(いまなほ)
塩原山中(しほばらさんちゅう)の惣鎮守(さうちんじゅ)として諸人(しょにん)崇敬(さうけい)せり社(しや)
内(ない)に大杉樹(おほすき)並(なら)びて二本(にほん)あり一|本(ほん)は周囲(まはり)四(よ)
丈(しやう)に近(ちか)く一|本(ほん)は三|丈許(しやうばか)り幹高(みきたか)からざるも
枝葉地(えたはち)に垂(たれ)て稀有(けう)の大木(たいぼく)なり之(これ)を以(もつ)て人(ひと)
皆(みな)|逆杉(さかさすぎ)と称(しやう)す是(これ)より東(ひかし)に方(あた)りて洞窟(とうくつ)あり
深(ふか)さ二丈|餘(あま)り其底(そのそこ)より脇(わき)へ入(い)る事(こと)二三十
間通(けんとほ)りて北崖(ほくかい)に達(たつ)す万治(まんじ)初年迠(しょねんまで)は八幡社(はちまんしゃ)
内(ない)の方(ほう)へも一條(ひとすじ)の洞穴通(どうけつとほ)りてありしか同(おなじく)
二|年(ねん)の大地震(おほぢじん)に岩石(かんせき)崩(くづ)れて塞(ふさか)りしと云(い)ふ
土人等(どじんら)|昔(むかし)|源三位頼政(けんさんみよりまさ)|此(この)|岩窟(かんくつ)へ隠(かく)れしゆゑ
源三窟(けんさんあな)と唱(とな)ふるなと云(い)へり又(また)八幡社前(はちまんしゃぜん)の
川向(かはむか)ふに方(あた)るを幕岩坪(まくいはつぼ)と称(しやう)す此地(このち)の絶壁(ぜつへき)
は削(けず)るか如(こと)く横(よこ)に引(ひき)たる筋(すじ)あるをもて幕(まく)
岩(いは)の名(な)を負(おほ)はせり是(これ)より本道(ほんどう)を旋(めく)り行(ゆけ)は
道(みち)の傍(かたはら)に有綱(ありつな)の社(やしろ)あり有綱(ありつな)は三位頼政(さんみよりまさ)の