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コレクション: STAGE1

塩原繁昌記 全 - 翻刻

塩原繁昌記 全 - ページ 37

ページ: 37

翻刻

始(はじめ)て薬泉(やくせん)と成物(なるもの)なれは其(その)吸入(きうにう)する鑛物(くわうぶつ)の 種類(しゅるい)に因(よ)りて病(やまひ)に適不當(てきふとう)のあるものなり 併(しか)し目(ま)のあたり見(み)へされは人々(ひと〱)其(その)原因(げんゐん)を 知(し)らざれども硫黄穴(いわうあな)へ水(みづ)を注(そ〱)きて其水(そのみづ)を 温(あた〱)むるも理(り)合(あひ)に於(おゐ)ては敢(あへ)て異(こと)なる事(こと)なし 客樓(やどや)は藤屋(ふぢや)。下藤屋(したのふぢや)。鶴屋(つるや)。蔦屋(つたや)。君嶋屋(きみしまや)。大黒屋(たいこくや)。 亀屋(かめや)。菊屋(きくや)。の八|戸(こ)相接(あひせつ)して簷(ぬき)を連(つら)ね此(この)八|戸(こ) にて湯元(ゆもと)塩原(しほばら)の一村(いつそん)を為(なす)と云(い)ふ家(いへ)の構(かま)へ は福渡戸(ふくわた)辺(へん)と同(おなじ)く皆(みな)二|階造(かいつく)りにて可(か)なり 手廣(てびろ)く山間(さんかん)には珍(めつ)らしき普請(ふしん)なり予(われ)中上(なかかみ) 塩原(しほばら)の両村(りょうそん)を経(へ)此(こヽ)に来(きた)りて以(おも)ひらく中上(なかかみ) 塩原(しほばら)は村内(そんない)も廣(ひろ)く戸数(こすう)も多(おほ)けれと矮少(わいせう)の 茅屋(ぼうおく)のみにて一の見(み)るべき物(もの)有(あら)ざれども 湯元(ゆもと)塩原(しほばら)は僅々(きん〱)八|戸(こ)の小村(せうそん)にて此(この)家屋(かおく)を 構(かま)へ得(う)るは単(ひとへ)に温泉(おんせん)の洪益(こうゑき)ある故(ゆゑ)ならん 天道(てんどう)何(なん)ぞ人に幸福(かうふく)を與(あた)ふるの偏倚(かたより)なるや