翻刻
大震後小震は猶四年間継続せり其中大震後の五日間の景况地震日記より抄する左の如し但
仝本の著者谷脇茂実は大震後船に乗り難を避け居りしかば水上の事とて強震の外は感ぜざ
る記録と知るべし
十一月五日 午后四時大地震あり夜中軽重地震八十余度あり
仝 六日 地震度々あり軽重は覚へず
仝 七日 小震度々あり
仝 八日 地震昼夜共あり小ゆり度々あり
仝 九日 地震昼夜とも六七度
又高知城下鷹匠町水門の番人嘉久助と呼ぶ七十五歳の老人の書ける地震度数覚を見るに
十一月四日後一ヶ年間の震数左の如し
一《割書:安政|元年》十一月分、合二百四十七度、内六七、中四十四小百九十六
一 十二月、合九十六度 内大三、中二十、小七十三、
一《割書:安政|二年》正月分、 合百十五度 内大無、中八、小百七
二月分 合六十三度 内、大無中七、小五十六、
三月分 合四十八度 内、大無、中六、小四十二、
四月分 合四十六度 内、大一、中四、小四十一、
五月分 合三十三度 内、大一、中二、小三十一、
六月分 合三十二度 内、大無、中一、小三十一、
七月分 合三十六度 内、大無、中六、小三十、
八月分 合十九度 内、大無、中十、小九、
九月分 合二十一度 内、大無、中十、小九、
十月分 合二十九度 内、大無、中一、小二十八、
十一月分合十八度 内、大無、中無、小斗、
十二月分合十四度 内、大無、中無、小斗
〆総合度数八百十七度
(辰) 地震の性質並方向
地震の性質並方向は学術経験の進歩しだる今日に在りては相当の工夫、器械の備はるあり
てこれが調査を試む敢て難きにあらずと雖も昔時に在りてはかゝる事に注意せる人とてこ
れあるなく零砕の材料により其万一を追究するに至るべきは実に至難の業たり
偖、安政元年十一月五日土佐国に感ぜる地震に就ては幸に当国に二三の記録あり就れも目
撃の事実を有りの侭に記載したるものにて能く其地震の性質並方向の概况を究むるに屈強
の材料となすに足るなり然れど元来該地震は西国三十余国に波及せる大地震なれば一国一