翻刻
五米内外のもの午后六時に至り殆一〇米に達し是より俄然勢力を増加し六時半には已に一
五、九米に達し、七時十五分には《ルビ:三二、一|〇〇〇〇》米の強度に達したり此時不幸にして測候所の風力
計は暴風の為め吹き飛され自後の風力観測をなす能はざりしは実に遺憾なりと雖も暴風の
精力はこれより猶回一回に猛烈を加へ午後八時前後には殆極端に達せしを覚へしが其風力
計飛去の時圧力七三七、二二粍にして猶三二、一米に達せしといへば一時間余の八時十分に
圧力更に十四粍を下れる七二二、二五粍の時には殆《ルビ:一秒時間四十米乃至五十米位には達せ|○○〇〇〇○○〇〇〇○○〇〇〇○〇》
《ルビ:しならん|○○○○》
偖参考の為め三十二年の八月の中央気象台月報に就て土佐暴風と同日なる二十八日隣国観
測の景況を見るに其調査大凡左の如し
圧力 (粍) 風力 (米)方向
夜八時 夜九時 夜十時 夜八時 夜九時 夜十時 夜十一時
多度津 七四〇、三 七二四、六 七四三、八 二一、六 (東) 三七(〇〇)、五(〇)(西) 一九、一 (南西)
神 戸 七四四、一 七四三、四 七四五、四 一二、五 (南東)一三、一 (南東)
松 山 七三七、三 七四四、二 七四七、五 一八、六 (北西) 二〇、四 (北) 四、四 (南西)
上表により之を見れば勢力の上下、風力の増減せる時刻は各地到る処相異なりと雖もこは
暴風中心の刻一刻に進行せる結果なだば敢て異とするに足らず兎に角孰の地も短少の時間
に圧力風力両者の急激の変化を起せるは当日暴風の勢力一般に激烈なりしことを察するに
余あり
中にも多度津(〇〇〇)に於ける夜九時の風力は三七米五(○○○○)の極数を得たるが是ぞ此回の暴風中《ルビ:全国に|〇〇〇》
《ルビ:て存在せし風力計の中最高度|○○○○○○○○○○○○○》を示せるものにして土佐に於ける風力計が三二米一の時飛び
去たりる後唯一の参考観測数たり然も余を以て之をみれば土佐国にをける風力は猶これに
勝りしものなるべく即ち風力計飛去りの後圧力さへも一時間許に猶ほ一四五粍の俄然たる
下降あれば其割合を以て察するに風力も亦同時刻より一時間位の後には徒に四又五米 (多
度津の最強風力は土佐の風力計飛去りの後の風力より四又五米位の増加にすぎず)の増加
にあらで確かに十米乃至二三十米以上の増加はこれありしならんと察せらるゝなり
偖右の如き風力が物体の面に及ぼす圧力は凡左の如し
一秒間三二米ノ時 一坪平方圧力百〇八貫
同 四〇米ノ時 同 百六十九貫
同 五〇米ノ時 同 二百六十四貫
之によりて見れば同日の暴風は午后八時前後の風力先づ三二米にして一坪面に付き百〇八