翻刻
いはむ
(ホ)窪川村にては同日朝来降雨あり午后六時頃南北方より交も風吹き変り同七時に至り
全く北風となり風勢次第に加はり瞬く間に大風雨となり八時頃又南風となり風力狂
猛人家を倒し樹木を折り瓦礫空中に飛散して避くるに途なく九時過に及んで又西風
に変じ十時頃暴雨徐々に己みたり同地の被害は圧死一名負傷一名全倒家屋八十三棟
其他建物二十四棟半倒家屋五十一棟其外建物十棟、大破損家屋二百棟其他建物百三
十八棟なりへ
(ヘ)仁井田村にては風害又大に最甚しきは床鍋部落にて戸数五十余戸の中過半は潰家と
なりき
(ト)東西津野村長者村は旋風及ばざりしと見へ長者村は戸数四百余の中倒家二十戸にも
満たずという
(八)幡多郡
(イ)中村町は午后五時過より己に暴風となり六時より七時に至り一層烈しく殊に時々赤
色の火先天の一方より飛散し来り家は倒れ瓦は飛び其物凄さいはん方なかりき家屋
破壊の概況は新地及下町の一部を部く【除くの誤りか】の外軒の傾き瓦の飛び屋根の落ちざる家は殆
ど一軒もなしといふて可なり実際上調査には全倒家屋納屋百三十七棟半倒七十九棟
大破損四百六十八棟あり
(ロ)下田港は碇泊の船舶流失十六艘破損六十五艘に及び港上建物は全倒人家五十三棟其
外建物五十二棟に及べり
(ハ)入野村は午后五時東風に強雨添ひ同六時に至り風位東北に変じ一層の烈風となり仝
七時半にて静止せり全倒家屋六十一棟半倒三十五棟大破損三百五十戸
(ニ)八束村にては風害の外四万十川の出水非常に甚しく仝夜午后十一時には平水より一
丈余の水量となり道路田畠を浸せしが翌日午后十時頃に至り漸く平水に復せり
(ホ)佐賀村には午前十一時頃より俗にいふイナサと称する東南の風起り天候頃る【頗るの誤りか】険悪と
なり午後四時頃より風勢頻りに加はり七時過より風位は西南に変じ一層激烈となり
人々生きたる心地なく泣き叫び逃げ惑ひ人の助を叫ぶ有様いと悲惨なりし
(ヘ)下川口村は朝来東南の微風に雨を帯び居りしが正午より漸次暴風となり午后五時頃
より風勢大に加はり六時過には俄然俗にいふアナジ(西北風)に変じ一層の暴威を逞
ふし雨も亦大に降り家を倒し壁を破ぶり殊に海浜の砂礫は飛んで人家を叩き其危険
いはん方なかりき
(ト)三崎村は午后四時頃より東南の風騒しかりしが五時より北東風又北風と変じ暴風雨
となり六時頃よりは更に北西風となり風勢最も惨烈を極め特に雷鳴を加へ俗に謂は