翻刻
市中の商家店出し夜のみ仮屋に臥す藩中にもまれ〳〵
日中家室に入るものあり予も仮屋のいつをさに日中家室の
端近に入るらんとけふハ人を雇ひ家室とりかたつけ煤払ひす
初度の大ゆれ先月の今宵なれハ衆心ほとなくその構へあり
果して午の刻大ゆれあり廿九日以来のおおゆれ也此時薄曇
空あひ悪しく午の下刻また中ゆれあり
廿五日朝曇南風雨交り巳の刻大風小ゆれあり午の下刻
風いやまし申の刻雨になる夜に入雨やみまた大風戌の刻
また大ゆれうちつゞき二三両中ゆれあり亥の下刻風やみ
大雨丑の刻に至雨はれる夜あけ迄折々山鳴動中ゆれ
折々ありけふも大ゆれに地中より砂水をふき出し井水濁る予
か外井戸大濁り内井戸ハ難なしすへて大ゆれある如に市
中の雑人火牛の火を追ふことく聲を發する事夥し
廿六日曇空色あしく卯の刻過中ゆれ辰の刻小雨辰下刻晴
巳の下刻大雨午の刻過より未の刻過る迄折々山鳴動小ゆり
あり未の中刻中ゆれ夜に入り折々山鳴地震あり未の下刻
また風立ッ此頃ハ何となく衆心安く市中半ハハ居宅へ入り
仮屋も半とりこほちなるにまた此変ありて衆心安からす
また仮屋の修覆夥し市中怪我人もあるよし田端町
間嶋何某の妻屋根石に当りて額をそぎ大怪我ありとそ