翻刻
御堀中鯉鮒鯰の類死して沈み出る事夥したま〳〵活けるも
砕るか如く手取になる後に聞く此魚を食をるもの食痛す直江
津の者と来る面色なし彼ものいふかゝる世に生れあひて此の変に合
るにと歎息す何事にやと問へは直江津日の色もつとも赤く
朝稲ひかりのことく光り夥し是たゝ事ならすと家々戸々
雑具とりかたつけ逃け支度するその騒動夥しとそ
廿九日薄曇日恋しきのふに同し南風を催す酉の刻大風衆
人寐るものなし丑の刻過る計り直江津新川端町そば屋と
申娼家ゟ出火折ふし大風防くに術なし此日朝小ゆれ有
五月朔日けふも大風やまず巳の刻風少しゆるやか也小雨ふる午中刻
雨強くほとなく晴れ夜南風少しふく夜中両度小ゆれ直江津
の火事前夜より今朝迄大風に焼けひろくり類焼九百八拾軒
余に至る土蔵大概焼亡その数五六十也四年前の大火に不残
焼失してまた此災にあはれむへし町方御借蔵焼
亡御米壱万千六百三拾三表焼米二なるその内四百表余焼飜
米三千九百弐表俵入の儘残るその夜竹田太夫御領奉行杉村武
兵衛御預地支配中村九郎左衛門おの〳〵馬上二而出張廿八日関川辺
昼夜大ゆれ三月中両度之大ゆれに比すれハもつとも劇し御関所
石垣柵破損の御届として前嶋甚左衛門高田へ着来
二日曇南気至て暑し夜に入小雨小ゆれ二三度あり