翻刻
四隣喧しいかにやとそのよしをきくに直江津の海水ひく事三里
はかり是津波の徴なりと庁へ訴へ出るよし折ふし北の方白
雲立のほるを海水あふれ来るよと誤りはや木田辺へをし
来るよと周章たる人々ハ雑具とりもたせ山手の方へ遁れゆく
もあり夜中の変信しかたしといへとも君子をも欺くへし天
災なしとも決しかたけれは家族の面色なきをとり鎮め
しはらく虚実の決断を待つかくて時うつりゆけハ跡かた
もなき妄言なりけり信州の変に十駅を出て遁れ来るもの
多しまたその難に横死せるもの高田にも多し藩中に鴇田
金次郎そのつれ二三輩善光寺詣の途中牟礼宿にて此変有
鴇田氏旅亭を出んとする時ゆり倒す柱に眉間をうたれその
まゝ即死す抑此度の変信州に比すれハ高田尤軽し
御城並御門諸所破損あれともひた潰れなるハなし藩中諸士
足軽に至る迄半潰大破小破の不同あれとも是またひた潰れ
なるハなし町家も凡藩中に同しそか中に御馬出し木戸際
の町家一軒中屋敷町直江町四五軒ひた潰れあれとも是ハ
もとより破損の家なれハなるへしされは藩中町かたとも
人命に恙なし郷中大谷山ぬけ死人多し田井高野川浦当町
此辺高田よりゆれ強く一村半ハひた潰れあるは半潰れ
死人もありとそ猶委しくハ下に記スへし未の斎はかり収