翻刻
空腹を凌ぐ雨なをやますいかんともをむかたなけれハ町家出入
のものを雇ひ六尺九尺の小屋に縮めてたゝおの〳〵膝入る計り
に此急難を凌く雇人の云僕きのふより終夜おのか小屋の
雨凌かんと夜明るまてひたさわきに狂ひまハりて夜明ぬれハ眩
暉して人事をしらさるに改るよく〳〵思唯すれハ前日より終夜食
事をわすれて空腹に堪へかねたるなりけりされはいま食事して
参りたりと此節の衆人突さもありなん巳の刻はかり雨やみぬ
前夜の荒れに妙光山雪ふりぬいと寒し終日小ゆれ七八度計り
覚ゆすへてきのふの大ゆれに藩中町家とも半潰多し町家
なとハ傾きかゝる家を起し土蔵なんとつくろひかけたるも
皆むだ事となしぬ凡両度の地震にいたまぬ土蔵ハなし
まして酒造家なとハゆりこほす酒夥しされとも六尺をゆり
倒したるハ市中になし郷中にハ皆ゆり倒したるも多し
直江津両度の地震高田に比すれハ尤劇し潰れ屋
二百軒に過たりされとも死人ハいまた聞かす御蔵不残大破
初度の大ゆれに翌廿五日朝御過役竹田太夫賄奉行杉村
武兵衛御預所支配中村八郎左衛門おの〳〵馬立二而今町へ出張
新川潟町尤地裂夥し婦人壱人盲人壱人地裂の中へ陥る
這上らんとすれとも砂かけ落て上りえさるをまたふき出ける
砂水共に両人を地上へ吹上ふしきに危難を免れる