翻刻
激烈震 津島、名古屋、熱田、枇杷嶋、清洲、一ノ宮
烈 震 勝川、挙母、足助、半田、豊橋
強 震 岡崎、知立、御油、新城、富岡
《ルビ:要|えう》するに愛知県下にて激烈の《ルビ:震動|しんどう》を感せしは其の《ルビ:西部|さいぶ》即ち愛知、東西春日井、丹羽、
葉栗、中島、海東の《ルビ:各郡|かくぐん》にして其他の地方は震動稍や《ルビ:軽|かる》かりしものゝ如し《ルビ:偖|さて》右の震災
を《ルビ:聞召|きこしめ》さるヽや 天皇 皇后両陛下よりは《ルビ:御手許|おてもと》より一万三千円を同県下へ《ルビ:下賜|かし》せら
れ猶ほ《ルビ:御名代|ごめうだい》として小松宮彰仁親王殿下を愛知岐阜両県下へ《ルビ:差遣|さしつか》はされしが愛知県庁
より十一月十日同県庁の《ルビ:措置|さち》を殿下へ《ルビ:上申|じやうしん》せり其文左の如し
明治廿四年十月廿八日《ルビ:午前|ごぜん》第六時三十八分五十秒俄然未曾有の大地震を《ルビ:発|はつ》し家屋の
《ルビ:頓例人畜|てんだうじんちく》の死傷少なからす加之名古屋市内には数ケ所に《ルビ:出火|しゆつくわ》あり市民の《ルビ:狼狽|らうばい》市中の
《ルビ:混雑|こんざつ》筆紙の能く《ルビ:盡|つく》す所に非ず県官警察官等自己の《ルビ:家宅|かたく》は顚倒せしも《ルビ:幸|さいわひ》に死亡負傷者
非ざりしを以て《ルビ:孰|いづれ》も直に《ルビ:出庁|しゆつてう》し非常の事務に《ルビ:鞅掌|おうしやう》す而して警察官吏は《ルビ:此劇震|このげきしん》一瞬時
の間に於て四方に馳せ《ルビ:悲叫救|ひけうすくい》を乞ふ者《ルビ:狼狽避途|らうばいひと》に《ルビ:迷|まよ》ふ者を保護し出火を消防し負傷
者は愛知病院好生館《ルビ:及|およ》び名古屋警察署《ルビ:聖徳寺等|せいとくじとう》に於て病院出張所を《ルビ:設|まう》け急難治療所
とし名古屋、秋田【熱田の誤りか】、枇杷島、清洲等の患者を三ケ所に《ルビ:送致|そうち》し一方には圧死者を《ルビ:発掘|はつくつ》せ
しむる等甲を《ルビ:救|すく》へば乙を失ふの《ルビ:恐|おそ》れありしも緩急を《ルビ:図|はか》り前後を《ルビ:斟酌|しんしやく》し百方圧力せし
む加ふるに《ルビ:宏壮|こうさう》なる郵便電信局は破壊して通信の便を欠くを以て《ルビ:速|すみやか》に之が開通を計
るの《ルビ:急務|きふむ》あり警察部長は急馳し第三師団司令部に至り《ルビ:其事情|そのじゝやう》を参謀官に談せしが会
々師団長既に《ルビ:其計画|そのけいくわく》あるに際し直に工兵を派し諸器械信書郵便切手局員の《ルビ:死屍|しし》を発
掘するあり次で第六連隊第十九連隊は《ルビ:師団長|しだんちやう》の命に依り兵員を《ルビ:部署|ぶしよ》して市内を警邏
し《ルビ:非常|ひじやう》を警戒せり名古屋監獄署は《ルビ:殊|こと》に破損多く且震動止まざるを以て一《ルビ:時|じ》《ルビ:囚人|しうじん》を監
房前の《ルビ:明地|あきち》に移して露宿せしむ然れども《ルビ:脱監|だつかん》の恐れあるを以て第三師団憲兵等の出
張を乞ひ警戒を《ルビ:厳重|げんじゆう》ならしめたり而して西春日井郡枇杷島は被害頗る《ルビ:多|おほ》く且つ出火
の《ルビ:急報|きふはう》に接す依て警察官県官消防夫を《ルビ:派出|はしゆつ》し事に急救に従はしむ其他管下各郡へ僚
属を分配し《ルビ:即時直|そくじたゞち》に出張せしめ郡衙と議し《ルビ:臨機|りんき》の措置に《ルビ:従事|じゆじ》せしむ而して《ルビ:震動|しんどう》は殆
んど間断なきを以て県庁に於て《ルビ:事務|じむ》を執ると《ルビ:能|あた》はず仮に県庁構内に事務所を《ルビ:設|もう》け県