翻刻
庁職員を《ルビ:分|わか》ち救助、衛生、土木、庶務、報告の委員とし専ら《ルビ:震災|しんさい》の事務に《ルビ:鞅掌|あうしやう》せし
む此災変の為め《ルビ:電信|でんしん》《ルビ:並|なら》びに汽車は不通となり急を報ずるの《ルビ:便|べん》を失ひ《ルビ:止|やむ》なく郵便を以
て《ルビ:此変事|このへんじ》を内務大臣へ上申せり午後六時に至り電報《ルビ:漸|やうや》く貫通するを以て直に内務大
臣へ急報す此変事に乗じ《ルビ:奸商輩|かんしやうばい》は叨りに米穀材木其他日常必需の《ルビ:物品|ぶつぴん》をして高価な
らしめ《ルビ:非道|ひだう》の私利を営み被害人民に困難を《ルビ:与|あた》へんとを恐れ之を《ルビ:制止|せいし》せんが為め懇篤
諭達を発し又好弁者空想を《ルビ:画|えが》き浮説を《ルビ:唱道|せうだう》し為めに人心恟々たるを以て慇撫安穏せ
しむるの《ルビ:諭告|ゆかく》を発せり又名古屋市役所、西春日井郡役所は《ルビ:被害人民|ひがいじんみん》に炊出行届かず
《ルビ:殊|こと》に西春日井郡は米の回送を《ルビ:急報|きふはう》す依て僚属に命じ米を購買せしめ更に《ルビ:僚属|りやうぞく》を増派
し米の《ルビ:運搬|うんぱん》並びに炊事に従事せしめたるも県属郡書記にては《ルビ:力及|ちからおよ》ばざるを以て第三
師団に乞ひ輜重兵の《ルビ:派出|はしゆつ》を得て炊事行届き漸く被害人民の《ルビ:飢餓|きが》を糊するを得たり又
愛知郡、葉栗郡、中島郡も米の《ルビ:回送|くわいそう》を報ず依て僚属を派し購買並に運搬に《ルビ:従|したが》はしむ発
の 《ルビ:当事失火|たうじしつくわ》は名古屋市外郡村数ケ所に《ルビ:起|おこ》りたるも警察官消防夫の力を以て《ルビ:消止|けしと》め
たり然れども枇杷島は名古屋に《ルビ:接続|せつぞく》の地にして時に西北の《ルビ:風強|かぜつよ》く或は名古屋市へ《ルビ:延|えん》
《ルビ:焼|せう》せんことを恐れ第三師団に兵士の出張を請うはんとせしが《ルビ:師団|しだん》に於ては既に出張の準
備中なるを以て《ルビ:直|たヾち》に出張を得僅に之を《ルビ:消止|けしと》めたり此消防に付ては飯田工兵大尉、吉
田工兵中尉尤も《ルビ:尽力|じんるよく》せらる又名古屋市、枇杷島、熱田等の《ルビ:負傷者|ふしやうしや》は愛知病院並びに
好生館 (私立病院)に於て《ルビ:治療|ちれう》せしめ且高等医学生徒四五名を一隊とし《ルビ:都合|つがふ》三隊を分
派して市中を《ルビ:巡廻|じゆんくわい》せしめ負傷者に一《ルビ:時|じ》《ルビ:救治|きふぢ》を施せり愛知病院に於ては 負傷者を入
るヽの《ルビ:場所|ばしよ》なきを以て第三師団より天幕数拾張を《ルビ:借受|かりう》け負傷者に雨露を避けしめた
り而して各被害の《ルビ:郡村中|ぐんそんちう》枇杷島、清洲、一の宮、起、萩原、稲沢、津島、岩倉、小
牧、小折、犬山へ医員に《ルビ:生徒|せいと》を随へ出張せしむ《ルビ:然|しか》れども負傷者多くして《ルビ:急|きふ》を救ふに
足らす依て中央赤十字社へ医員看護婦の出張を《ルビ:請|こ》ひ又赤十字社愛知支部の《ルビ:医員|いゐん》を招
集し被害の《ルビ:郡村|ぐんそん》へ派出せしむ然れども郡村に在ては医員の《ルビ:派遣|はけん》を請ふて止まず依て
額田郡長に《ルビ:命|めい》じ岡崎開業医の出張を《ルビ:促|うなが》し同医を以て補充するも尚ほ《ルビ:其不足|そのふそく》を告げた
り《ルビ:恰|あたか》も好し中央赤十字社医員、看護婦、医科大学教師スクリバ氏一行及び第一等高
中学校医学部の医員慈恵医院医員の一《ルビ:行|かう》《ルビ:幷|ならび》に明治生命保険会社の医員《ルビ:追々|おい〳〵》出張あり