みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE2

愛知岐阜福井三県 大地震見聞録(内題) - 翻刻

愛知岐阜福井三県 大地震見聞録(内題) - ページ 23

ページ: 23

翻刻

して両町の《ルビ:間|あひだ》に庄内川の流れを《ルビ:隔|へだ》てたる一小市邑なるが両町にて《ルビ:潰|つぶ》れ家は千百二十五 戸、《ルビ:半潰|はんつぶ》れ家は三百六十二戸にして《ルビ:死者|しゝや》は百四十七人、《ルビ:負傷者|ふせうしや》は百七十五人の多きを 出し《ルビ:特|こと》に地震中枇杷島町の中二ケ所より《ルビ:火|ひ》を出して《ルビ:将|まさ》に大事に至らんとせしが第三師 団工兵及び《ルビ:消防夫|せうばうふ》の尽力にて漸く《ルビ:鎮火|ちんくわ》せしとなり《ルビ:編者|へんしや》が名古屋より枇杷島町に赴きし は十月三十一日の事にて即ち《ルビ:震災|しんさい》後己に四日を《ルビ:経|へ》たれど《ルビ:焼跡|やけあと》の《ルビ:余焔|よえん》は猶ほ天を《ルビ:焦|こが》すば かりにて其の《ルビ:惨状|さんじやう》云はん方なかりき先づ名古屋市を《ルビ:離|はな》るゝに従つて家屋は《ルビ:概|おほむ》ね潰倒し 漸く《ルビ:残|のこ》りたるものも皆八十度位に《ルビ:傾|かたむ》き全く無事なる《ルビ:家|いへ》は五分の一にだも及ばず《ルビ:町幅狭|まちはヾせま》 き《ルビ:往還|わうくわん》へ家の《ルビ:潰|つぶ》れ《ルビ:落|お》ちたる後ち猶ほ《ルビ:幾日|いくか》をも経ざる事ゆゑ未だ《ルビ:片付|かたづけ》も《ルビ:行届|ゆきとゞ》かず《ルビ:腕車|わんしや》は 瓦、《ルビ:壁土|かべつち》などの《ルビ:堆|うづた》かき上を《ルビ:通過|つうくわ》して庄内川の《ルビ:堤塘|ていたう》に出づるに枇杷島の《ルビ:木橋|もくけう》 (長さ百五 十間許)は《ルビ:中心|ちうしん》の《ルビ:橋杭折|はしくひを》れたるが為めに《ルビ:凹字形|あふじけい》となり橋の《ルビ:全体|ぜんたい》は稍や五十六度の《ルビ:勾配|こうばい》 を以て南の方に傾き《ルビ:旅人|りよじん》は其上を《ルビ:通行|つうかう》するなど頗る《ルビ:危険|きけん》の模様あり《ルビ:橋|はし》を《ルビ:渉|わた》れば即ち《ルビ:字|あざ》 下小田井にして此地の《ルビ:震災|しんさい》も亦頗る甚だしく《ルビ:潰|つぶ》れ家は殆ど四五《ルビ:割|わり》の多きに及べり此処 に《ルビ:至|いた》るまでの内《ルビ:諸所|しよ〳〵》に無数の《ルビ:地割|ぢわ》れあるも其の《ルビ:裂|さ》け目は《ルビ:幅|はゞ》七八寸乃至一尺に過ぎず然 るに枇杷島橋両岸の《ルビ:地罅|ちか》は幅三尺に《ルビ:近|ちか》きものありて其の《ルビ:震動|しんだう》の《ルビ:強|つよ》かりしも亦想ひやら る此の地罅は《ルビ:重|お》もに新しく《ルビ:盛土|もりつち》を為せし《ルビ:河堤|かてい》、《ルビ:鉄道線路|てつだうせんろ》、若くは田地等に《ルビ:多|おほ》くして或は 《ルビ:縦|たて》に或は《ルビ:横|よこ》に其方向一定せずされば《ルビ:地質専門家|ちしつせんもんか》も是に依りて水平動の方向を《ルビ:考定|かうてい》する こと《ルビ:難|かた》しと云へり夫より庄内川の《ルビ:西岸|せいがん》に《ルビ:沿|そ》ひて北行するに往くに従つて《ルビ:亀裂|きれつ》の《ルビ:数太|すうはなは》だし く《ルビ:堤防|ていばう》は処に依りて一間余りも《ルビ:地中|ちゝう》へ《ルビ:陥|おち》いりたるあり就中一見膽(いつけんきも)を《ルビ:冷|ひや》さしむる者は 〇小田井堤の陥落 なり《ルビ:下小田井|しもをだゐ》とは枇杷島の《ルビ:字|あざな》にて堤は枇杷島橋を《ルビ:距|さ》る廿町の所に あり此《ルビ:堤|つゝみ》は廿八日大地震に《ルビ:俄然中央|がぜんちうわう》より《ルビ:壊裂|くわいれつ》し其の左の半部分は《ルビ:横|よこ》に《ルビ:倒|たふ》れ従来の地面 は《ルビ:直立|ちよくりつ》して一の《ルビ:城壁|せうへき》を形づくり往来人は是まで堤の《ルビ:側面|そくめん》なりし《ルビ:芝生|しばふ》の上を歩み行くな ど頗る《ルビ:奇異|きい》なる現象を呈せり此の《ルビ:余波|よは》にや堤の左方にありし《ルビ:面積|めんせき》五畝ばかりの《ルビ:竹藪|たけやぶ》は 西南の方に《ルビ:押出|おしだ》されて全く其所を異にし《ルビ:堤下|ていか》の《ルビ:小溝|こみぞ》とニ畝ばかりの《ルビ:水田|すゐでん》とは此竹藪の 《ルビ:底|そこ》に《ルビ:埋|うづ》められて其の《ルビ:所在|しよざい》を知らず堤の左方にある一軒の《ルビ:民家|みんか》も亦《ルビ:地盤|ちばん》の《ルビ:陥落|かんらく》と共に堤 下に《ルビ:辷|すべ》り落ち《ルビ:床|ゆか》は土中に《ルビ:埋|うづ》められたるなど頗る《ルビ:奇怪且惨憺|きくわいかつさんたん》たる有様なり某技師の物語 りにては《ルビ:斯|かゝ》る地変は其例なきにしもあらず《ルビ:現|げん》に去る明治五年石州にて《ルビ:地震|ぢしん》ありし時郷