みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE2

愛知岐阜福井三県 大地震見聞録(内題) - 翻刻

愛知岐阜福井三県 大地震見聞録(内題) - ページ 32

ページ: 32

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当てられぬ《ルビ:有様|ありさま》にて手を《ルビ:焼|や》き足を《ルビ:爛|たゞ》らし野獣も通れぬ《ルビ:嶮崖絶壁|けんがいぜつぺき》を逃げ廻り《ルビ:烟|けふり》に《ルビ:巻|ま》かれ て死したるも多し此火は《ルビ:翌|よく》二十九日午前十一時《ルビ:頃|ごろ》に至つて漸く《ルビ:鎮火|ちんくわ》せしが焼失戸数凡 そ二千余戸にて《ルビ:昨日|さくじつ》まで豪商大家と《ルビ:言|い》はれし者も今日は《ルビ:粥|かゆ》をもすヽれぬ《ルビ:窮苦|きうく》に陥り焚 出し所に《ルビ:到|いた》りて見れば《ルビ:洋装|やうさう》せし男の《ルビ:握飯|にぎりめし》を手づかみにて左も《ルビ:心嬉|こゝろうれし》しげに食ふあり矢野 嘉右衛門氏の如きは《ルビ:音|おと》に聞ゆる《ルビ:豪商|がうしやう》なりしが火事の際《ルビ:器具|きぐ》其他一切の書類を大土蔵に 《ルビ:入置|いれお》きしに命と《ルビ:頼|たの》む蔵は悉く焼失して着の身着の儘とは昨日に《ルビ:変|かわ》る飛鳥川物の《ルビ:譬|たと》へも なき話しなり又《ルビ:芸妓|げいぎ》なんどは衣類器具《ルビ:残|のこ》らず焼き失ひ雨露を《ルビ:凌|しの》ぐべき所もなくて一夜 を《ルビ:泣|な》き明すあり道具を片付る時《ルビ:襲|かさ》ね《ルビ:着|ぎ》は不便なりとて《ルビ:殊更|ことさら》単衣一枚にて働きしもの悉 く《ルビ:荷物|にもつ》を焼き失ふて眼前《ルビ:飢寒|きかん》に臨むあり笹土居町の松田屋伊八と《ルビ:云|いへ》るは料理屋中の《ルビ:金|もの》 《ルビ:満|もち》なるが矢張今回の《ルビ:火災|くわさい》に焼き尽され或人より一枚の《ルビ:襦袢|じゆばん》を《ルビ:恵|めぐ》まれたりとて泣きの涙 にて《ルビ:物語|ものがた》りしも《ルビ:道理|だうり》とこそ云ふべけれ、官吏中にも《ルビ:負傷者|ふしやうしや》多く川俣郡長は死し後藤郡 長は《ルビ:半死|はんし》、西村技師は命は《ルビ:助|たす》かりさうなりとの事同地は今回《ルビ:震災|しんさい》の中心とも云ふべき 地なれば日々《ルビ:震動幾回|しんだういくゝわい》と云ふを知らず《ルビ:現|げん》に《ルビ:市民|しみん》は尚ほ家に入らず《ルビ:処々|しよ〳〵》に仮小屋を設け