翻刻
て《ルビ:震災|しんさい》後七八日を経るも猶ほ《ルビ:其筋|そのすぢ》へ死亡届けを《ルビ:出|だ》さず取調べ上頗る《ルビ:困難|こんなん》を来せし程な
りと云ふ同町の東《ルビ:本願寺別院|ほんぐわんじげべつゐん》にては信徒を集めて《ルビ:説教|せつきやう》最中なりしが《ルビ:俄然|ぐわぜん》堂宇の顛倒し
来りたるが為め《ルビ:参詣人|さんけいにん》一同は《ルビ:逃|のが》るゝに道なく圧死を《ルビ:遂|と》げし者数十人の多きに及び其《ルビ:死|し》
体は追々に《ルビ:発掘|はつくつ》したるも巨木大材の為めに《ルビ:埋没|まいぼつ》せられ尚ほ未だ《ルビ:発見|つけん》【読み:「はつけん」】し得ざる者ありて
其《ルビ:有様|ありさま》彼の大垣開闢寺の惨状に《ルビ:譲|ゆづ》らず又此地には取分け《ルビ:盗難|とうなん》の多かりしを以て人民は
《ルビ:終夜鉦|よもすがらかね》《ルビ:太鼓|たいこ》を鳴らして《ルビ:放火|ほうくわ》を戒むることを厳にし《ルビ:無提灯|むてうちん》の者と見れば何人を問はず《ルビ:夜|よ》
《ルビ:番|ばん》の者八方より《ルビ:竹槍|たけやり》、《ルビ:棍棒|こんぼう》等を以て《ルビ:撲|う》ち《ルビ:据|す》ゑるやうに為しければ窮盗の《ルビ:夜行|やかう》全く《ルビ:絶|た》
たりと云ふ
●北方、関、高富の震災 本巣郡北方は《ルビ:市街|しがい》七分通り《ルビ:崩潰|ほうかい》し《ルビ:其他|そのた》は皆半潰れとなりた
れども幸ひにして火を《ルビ:失|しつ》するには至らず同郡穂積村なる井上源衛氏《ルビ:構内|こうない》の製糸工場は
女工百余人就業中に工水用水場の《ルビ:溜池破壊|ためいけはくわい》し数十石の用水激浪を揚げて《ルビ:工場|こうぢやう》を衝き来
り為めに《ルビ:蒸気機関破裂|じようきくわんはれつ》し煙筒《ルビ:粉砕|ふんさい》し源衛の母子二人及び《ルビ:親族|しんぞく》、女工中圧死又は焼死し
たる者十五人に及び《ルビ:其他|そのた》は多く負傷し《ルビ:同地内|どうちない》にある駐在所詰巡査一人は《ルビ:救護|きうご》の折右手