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コレクション: STAGE2

愛知岐阜福井三県 大地震見聞録(内題) - 翻刻

愛知岐阜福井三県 大地震見聞録(内題) - ページ 7

ページ: 7

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られし程(ほど)にて之を歴史(れきし)上に徴するも往昔(むかし)より我邦の屢〻【読み:しばしば】震災(しんさい)に罹(かゝ)りしとは疑ふべからざる事実(じゝつ)なれども今回の如き地変(ちへん)は実に安政元年以来の大地震(おほぢしん)とも云ふべきものにして近くは盤梯山(ばんたいさん)の破裂(はれつ)、熊本(くまもと)の地震(ぢしん)も其震力は此度(このたび)の地震に及(およ)ぶべくもあらず去れば其の災害(わざはひ)を波及(はきう)せしとも亦従つて広(ひろ)く且大にして現(げん)に愛知、岐阜、福井三県下《ルビ:幾|いく》百万の罹災者(りさいしや)は僅かに仮(か)り小屋(ごや)の中に雨露(うろ)を凌(しの)き辛うじて一命を繋(つな)ぐの不幸に陥(おち)いりぬ誠に酸鼻(さんび)に堪(た)へざる次第といふべし今ま各県震災地(かくけんしんさいち)の実況(じつきやう)を記述するに先だち地震の原因(げんいん)に就(つい)て某理学博士が親(した)しく編者に説(と)き示されたる理学上の解説(かいせつ)を掲げ之に震災地々質及び地溝帯略図(ちかうたいりやくづ)を添へて聊(いさゝ)か説明する所あらんに今回(こんくわい)愛知、岐阜、福井三県に於て最強(さいきやう)の震動を感(かん)じたる地震は噴火作用(ふんくわさよう)にはあらずして断層(だんそう)の変態(へんたい)即ち地辷(ちすべ)り地震といふものなり元来《ルビ:地球|ちきう》は大陽の熱(ねつ)を受(うけ)て其外面絶ず収縮(しうしゆく)し随て始終(ししう)山脈の搆造(かうざう)(MountainForming)を爲しつゝあるものなるが地球上(ちきうじやう)の一部分に凸処(とつしよ)を生(しやう)ずるには必らず其の他(た)の部分に凹処(あふしょ)若くは割(わ)れ目(め)を生ずること理の当然(たうぜん)にして地下に無数の断層(だんそう)(Fault)を生ずるも亦《ルビ:此理|このり》に外(ほか)ならず今《ルビ:覩易|みやす》き一例を挙(あ)げんに方一尺計りの板護謨(いたごむ)を四方へ引延(ひきのば)したる後ち其の隅々(すみ〴〵)を釘(くぎ)にて打付け置き偖(さて)此の板護謨(いたごむ)の上に粘土(ねんど)を厚さ一寸ばかりに塗(ぬり)付(つ)け粘土の外面《ルビ:稍|やゝ》や乾(かは)きたるを俟(まち)て隅々の釘を一時に抜去(ぬきされ)ば護謨(ごむ)の収縮(しうしゆく)する働きにて粘土の外面(ぐわいめん)は或ひは高(たか)く或ひは低(ひき)くなりて高きは山を形(かたちづ)くり低きは谷《ルビ:若|もし》くは平原となり輙(たやす)く地球(ちききう)外面の雛形(ひながた)を得ることあるべし去れば此の収縮力(しうしゆくりよく)の爲めに生(しやう)じたる地下(ぢか)の割(われ)目を断層(だんぞう)と名け此の一聯(いちれん)の断層長く連続(れんぞく)し地皮是が為めに陥没(かんぼつ)して凹(くぼめ)る溝を形づくり山岳(さんがく)多き地ならば谷(たに)となり平地ならば海(うみ)、湖水(こすゐ)又は河流(かりう)となり此《ルビ:陥落|かんらく》地が帯の如く続きたる処を地溝帯(ちこうたい)とは云ふなり日本にて地溝(ちこう)の大なるものはドクトル原田の所謂(いはゆる)「瀬戸内地溝帯」にして此の地溝(ちこう)は西は長門、豊前の間より中国四国の間即ち瀬戸内(せとうち)を経(へ)て略図中 (イ)の部にて大坂《ルビ:湾|わん》に接続(せつぞく)し大坂より淀川(よどがわ)を遡(さかの)ぼりて京都に接続(せつぞく)し夫より琵(び)琶湖(わこ)の中心(ちうしん)を横断(わうだん)して塩津《ルビ:近傍|きんばう》より深阪越、疋田近傍を経(へ)て敦賀(つるが)に出で越前の海岸(かいがん)に沿ひて北行(ほくかう)し(ロ)にて日本海に入るもの即(すなは)ち是なり又東西(またとうざい)に走れる一地溝とも云ふべきは若州《ルビ:小浜|をはま》より近江の今津近傍(いまつきんばう)を通過(つうくわ)し琵琶湖中《ルビ:竹生島|ちくぶじま》の辺りにて瀬戸内《ルビ:地溝帯|ちこうたい》を十《ルビ:字形|じがた》に横(よこ)ぎり(琵琶湖中此の十字形を為せる所幅最も広(ひろ)くして且最も深し是れ亦《ルビ:陥|かん》