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コレクション: STAGE2

愛知岐阜福井三県 大地震見聞録(内題) - 翻刻

愛知岐阜福井三県 大地震見聞録(内題) - ページ 77

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方より起(おこ)り来れるか如き感覚(かんかく)ありと云ふに至りては其故(そのゆゑ)なきにあらざるが如し元来(ぐわんらい) 伊勢湾凹窪地は数多の断層(だんそう)より成り且其 方向(ほうかう)は南北なれば一 朝動力(てうどうりよく)の刺衝(しゝやう)に遭(あ)へは 容易(ようゐ)に東西に蕩揺(たうえう)せんことは自然の理(り)なるべし去れども震動(しんどう)の方向は通例乱雑(つうれいらんざつ)にし て屈曲極(くつきよくきは)まりなきものとす    水脈の異変 都(すべ)て地震の前後に於て地水に異変(ゐへん)を生ずることは恒例(つうれい)にして今回も亦各地に此 事実(じゞつ) を見(み)たり即ち名古屋岐阜福井市の如き地震後(ぢしんご)井水 濁(にご)り或は涸(か)れ或は漲(みなぎ)り甚しきに至 りては噴水(ふんすゐ)となりて迸流止(へひりうや)まどるものあり蓋(けだ)し震動の最中(さいちう)に地面 破(わ)れを生(しやう)じ此破れ 目より濁水(だくすゐ)を噴出(ふんしゆつ)するは恰も海綿(かいめん)を浸(した)して其水を搾(しぼ)り出(だ)すと同一の理にして地体(ちたい)の 圧迫(あつぱく)に因るものなれば多くは其 当時(たうじ)に見るの現象(げんしやう)にして概するに此 噴水(ふんすゐ)は乍ちにし て歇(や)み唯 泥砂(でいしや)の堆積物は其迸出(へいしゆつ)の多少に依て大小の嵩(かさ)を成す其 形状(けいぜう)恰も噴火山の雛 形の如く完全(くわんぜん)なるものに至りては中央 凸(たか)く中心点に凹所(あふしよ)あり即ち噴水(ふんすゐ)の通路にして 噴火口(ふんくわこう)と其性を同うす猶此矮山は地破れの線路(せんろ)に点々列をなすこと亦 噴火脈線(ふんくわみやくせん)に火山 の配列(はいれつ)を成すと一般なり而して此 泥土(でいど)を験(けん)するに毫も硫気(りうき)を含(ふく)むものを見ず又水脈 の涸渇(こかつ)したると増水(ぞうすゐ)若くは新(あら)たに地破(ちわ)れの罅隙(かげき)より噴出(ふんしゆつ)したるものは地動中地下(ちだうちうちか)に 生(しやう)じたる破(わ)れ目(め)の作用に由るものにして将来回復(しやうらいくわいふく)するものと否(しか)らざるものとあり 是一は新成(しんせい)の裂罅(れつか)を土砂の填塞(てんさい)すると一は従来の罅隙(かげき)より出る水平以下に新罅(しんか)を得 て此処より容易(ようゐ)に湧出(ゆうしゆつ)の道を他に出したるに由(よ)るものなるべし有名(いうめい)なる福井市の福 水 湧泉(ゆうせん)の如きは震災(しんさい)の時全く噴出を止(と)め本官在福の当日まで旧(きう)に復(ふく)せず市名今は有(いう) 名無実(めいむじつ)となりしのみならず元来浄水に乏(とぼし)き市内なれば其方面 市民(しみん)の不幸一層なる べし其故(そのゆゑ)は同市の此 冷泉(れいせん)を仰(あを)ぐ部分は地質堅牢(ちしつけんろう)にして震災(しんさい)を蒙(かふ)むることは市内(しない)他の 低卑(ていひ)の地に比(ひ)して少き場所なるも地盤(ちはん)は著名なる建築材(けんちくざい)に用ふる尺谷石(しやくやせき)より成れる に由り一旦 地割(ちわれ)を生じて従来の地水地に滲漏(さんらう)し去らんには地体(ちたい)の堅硬(けんかう)なるが故に容 易に新路(しんろ)を填塞(てんさい)する能はず却て復旧(ふくきう)の望 鮮(すくな)かるべき学理(がくり)あれはなり且 斯(かく)の如きもの は其 泉源(せんげん)多く深遠(しんゑん)の地底(ぢそこ)にあれば地表に達する水路(すゐろ)に於て新裂罅(しんれつか)を通過(つうくわ)することも 従て多からんか