翻刻
但し惣湯場とも号(がう)し悪病(あしきやまひ)などの者(もの)をば此湯に入るなり
此|四壷(よつぼ)の終(おはり)にて是より湯|下水(げすい)の方へ流(なが)しすてるなり
一|腫物(しゆもつ)の類(るい)|膿(うみ)|潰(つぶ)していまだ吹切(ふききら)ざるには湯風呂の樋口(とゆぐち)へ其はれたる
所をあてがひ浴(あび)るに忽(たちま)ち口(くち)破(き)れ膿(うみ)出|尽(つき)るなり此|膿汁(うみ)|流(なが)れ出ばとて
湯に交(まじ)るにもあらず濃(こき)水は膿にて別(べつ)に湯の中より絹糸(きぬいと)のごとく
上へ浮(うき)て流(ながれ)出しいさゝかも湯の穢(けが)るゝ事なし
但し如此病者は湯口を禁(きん)ず只(たゞ)湯の流(ながれ)落(おつる)方にて浴(よく)すべき事
所のおしへなり
達广湯(だるまゆ) 但|芦(あし)の湯の町はづれにあり
温泉功能
一たゞれ眼(め)一|逆上眼(のぼせめ)一つきめ一そこひ一うはひ
一|目(め)ぼし一むし歯(ば)一|舌瘡(したかさ) 一|口熱(こうねつ) 右の分|不残(のこらず)外(そと)湯
一《割書:湯宿| 》松坂屋万右衛門 一《割書:同| 》亀屋兵藏 一《割書:同| 》伊勢屋清左衛門
一 吉田屋平兵衛 一《割書:同| 》紀伊国屋忠右衛門 一《割書:同| 》大黒屋槌右衛門
湯花(ゆのはな)の製法(せいほふ)
芦(あし)の湯(ゆ)にて製(せい)す其(その)製し方芦の湯温泉の流(なが)れすたる下水(げすい)の
両岸(りやうきし)にいつとなく凝(こり)つきしを桶(をけ)に汲(くみ)取(とり)扨(さて)四五|尺(しやく)の水船(みづふね)に菰(こも)を敷(しき)て其(その)
上(うへ)に右(みぎ)の湯を柄杓(ひしゃく)にてそろ〳〵とそゝぎかくれば水は下へ洩(もれ)て湯花のみ
菰(こも)に溜(たま)りたるを貝杓子(かいじやくし)やうのものにてすくひ板(いた)にのせて乾(ほ)し堅(かた)
むるとぞ但(ただ)し日和(ひより)を見定(みさだめ)て干(ほす)事也大抵(たいてい)芦の湯|里民(りみん)の手業(てわざ)也
明礬(みやうばん)の製法(せいほふ)
是(これ)は明礬(みやうはん)伊亜麻より流(なが)るゝ明礬水の下へ竹簀(たけす)をかき並(なら)べ上(うへ)に菰(こも)
を敷(しき)夫(それ)へ止(とゞま)るを取(とり)て煎(せん)じ製(せい)す《割書:此煎し方|いえ別あり》製法|湯(ゆ)の花(はな)に似(に)て
少(すこし)異(ことな)り明礬山は権現領(ごんけんりやう)にて山の半腹(はんふく)に彼方(かのかた)よりの明礬小屋(みやうばんごや)
しつらひあり
姥小(うばこ)の湯