翻刻
【右丁】
まよひぬれ
心の雲の
はれぬれ
ば
智恵(ちゑ)も
情(なさけ)が
有明(ありあけ)の月
心の雲とは私欲(しよく)の事也人の心は本来(ほんらい)明らか成月のごとく照(てら)さゞる所なし然れ共 人欲(しんよく)雲さし出れは
義理の良智(つけくち)くらく無理 非道(ひどう)をなせりされば古書にも雲はれて後の光と思ふなよもとより雲
に有明の月と唯(たゞ)つとめて人欲(しんよく)の迷雲(めいうん)をはらひ義理の良智をひらけば慈悲(じひ)円満(ゑんまん)の月 明(あき)らかなりとぞ
【左丁】
広(ひろ)く世を
めぐむ心を
さき
として
よろづ
ついえを
いとふべきなり
国天下をしろしめす人は国中は申に及ばず■ 境(けう)の外野の末山の奥(おく)までも万民其たのしみをたのみ
其利を利として悖迷(はいぎやく)争奪(さうたう)のおこらぬやうに御心ざし背て出事おごりをやめ倹約(けんやく)を守り給ふべし
万民(はんみん)を安(やす)んじすくはんと思■御志背ても驕(おこり)ほしゐまゝにしてむさと財宝(ざいほう)をつかひついやし御手
おすりきり給へば施(ほとこ)し救(すく)ふ事は■■かへつて■■を事とし民の財宝をはぎとるより外の
事なし故に民を撫育(ぶいく)せんには物毎(ものごと)費用(ひよう)をいとひはぶきおごりをやめ倹約(けんやく)を守(まも)るを本(もと)とすべきとぞ