翻刻
しるところにて日本三如来乃第一なり
されバ此度もかゝる|急変(キフヘン)の折からに
御堂つゝかなかりしハ|全以仏力(マツタクモツテブツリキ)乃しからし
むるところか末世乃|利現(リゲン)いちじるく
いよ〳〵あほきしんじべき事にこそ
信心ごせうを願ひ助りに行し者
皆生埋二なるとハ何事ぞたれぞ助て
くれる者ハなかつたかいかなる事や
一当所横丁へ|此頃按摩来(コノコロアンマキタ)り|居(イ)テ夜分ハ|笛(フヘ)
ヲ吹テ|挊(カセギ)二|毎晩上下(マイバンカミシモ)ト|歩行(アルキ)し|故(ユヘ)或時
|按摩(アンマ)ヲ|呼(ヨビ)入て|揉療治(モミリヤフジ)をしながら|其(ソノ)
|許(モト)ハ|何国(イヅク)乃人にテ候哉ト問按广乃|答(コタヘ)
拙者ハ信州の者也又問信州ならバ此度
乃地震乃様子ハ如何存居候哉按广
答て拙者事其地震故二此間当所江
参り候也ト|然(シカレ)ハ其様子ヲ問按广曰
私義ハ《松本》乃者也此度善光寺開帳故
諸国ゟ諸人参詣有べし依て商売
善光寺ゟ南に当り三里あり
|挊(カセギ)に《稲荷山》ト云所家数三百七十六軒
程有之諸人通行の道筋故此所乃
|端迦(ハジハヅ)れノ方|少分成(チイサナ)宿へ私ト外二壱人
同商売按广二人ニテ旅宿ヲ定毎晩
商売ヲ勤居候所二三月廿四日の事ハ
一人乃按广ハ早夕飯ニテ商売二出掛
私事ハ飯ヲ|静(シヅカ)二|給(タベ)テ仕舞一ぷくいたし