翻刻
土中ニ成し場所のもの共壱人も助らず
むざん也ける次第なり又此郷の片辺り
に竪(タテ)四十間横三十間余りの堤有水の深サ三
間余り有りけるが地しんにゆり出されて一水
残らず替(かえ)上たり是を見て地しんのあら
き事を知るべし此外所々のそうどう大
方ならず何方にても寝しづまりたる頃なれ
ば皆人々は只一すいの夢地しんにさまし
こわ何事とおどろきあわてふためきおき
上り袷壱ッを弐人三人などして引ぱり引合こ
けるやらまどぶやら方をたがへて戸棚ニ懸然入
などしてじたばたするやら腰をぬかしてもがく
やら家内のそうどう上ヲ下どさくさ早わざ
是中もはだしはだかで裏表飛出懸出し
壱もく三月春の夜の闇はあやなし爰かしこ