翻刻
善光寺大あれの事
此度の大地震にて善光寺にては家数弐千
三百余軒こと〴〵く焼失せり此外四拾六坊之
寺々皆焼たり焼残りたるは崩屋《割書:是は地震にて|崩レたるなり》
五拾弐軒|本坊(大クハンシン)江少し焼入残る右たをれ掛て有
御本堂山門たをれずして残る山門の内|金(カナ)燈籠
石燈籠鐘つき堂経堂仏像何れも皆タヲレケル
只御陣の八まん御年五【号】御尓六【弥勒】ハ百代廻ける
中にも大仏一躰たをれずして残りける如来様御
本堂にこもりける人々は一人も怪我なかりけり
偏に仏力擁護之御助なりとこそ申けり
抑此時之火事と申は風はげしくて火の走る事
は龍星の如し一時に町内残なく焼失しけり
逃出ける人々は|炎(ホノホ)に包まれて焼死者も有り
鴨居柱に打れて死も有り残り|少(スクナ)に助りし分
能々ク神仏の加護ならんか