翻刻
弁慶と心得恐れをなして寄付す又太平
記の合戦にも逃る味方をてきと心得けるもお
かし此般の地震にもあせりし者ハ戸棚
に入又戸口ニ至りて明んとしてハ戸跡より押立け
れバ明る様なし四月十三日の洪水にも腰を
ぬかしていざりにおくれ下り急逃て盲ニ
おしへられけるもいと浅ましき事なり又
地震の後も早合点成者ハ常に居ろりのは
たにすり鉢を置ける是ハ若シ地震の内ゆらば
火のつぼに伏ん家たをれる共出火有まじと
の心懸ケなり或夜簞笥にかな字のカタ〳〵と
響けれバ地震と心得研鉢ハ扨置丸はだかにて
褌もせず瀬戸にさしてぞ飛出けるに事もなけれ
バ又々閨中へぞ入ける是ハ次の間の寝所にて
|息子(ムスコ)|女夫(フウフ)|夫婦(ミトノ)|講合(マクバイシ)の音にてぞ有しと也