翻刻
の類(るい)をはなれたる重(おも)き食物(しよくもつ)なる故聖人(ゆへせいじん)の
春秋(しゆんしう)といふ書(しよ)を著(ちよ)し給へるにも稲(いね)や麦(むき)の損亡(そんぼう)
を挙(あけ)給へり此二種(このにしゆ)の損亡(そんぼう)は人世(にんげん)の大なる災(わさは)ひ成(なれ)
はなり農人(のうにん)たらんもの能此天道(よくこのてんとう)の理(り)を仰(あを)き尊(たつと)とひ
慎(つゝしん)で天意(てんい)を請殊(うけこと)さら稲(いね)と麦(むき)とを作(つく)るに其(その)
術(じゆつ)を尽(つく)し力を用ゆへし是則農民天道(これすなはちのうみんてんとう)を尊(たつと)
とふ道(みち)にして命(いのち)を保(たも)ち福(ふく)を受(うけ)る術(じゆつ)なりと言り
文化の初(はじ)め我大父公務(わかたいふこうむ)に依(よつ)て下野国那須郡(しもつけのくになすこおり)に
至(いた)る事有黒羽執政(ことありくろはしつせい)の人に鈴木武助(すゞきぶすけ)《割書:諱正長号蘭庭|享保壬子二生ル》と言
賢翁(けんおう)也|文武(ふんぶ)に達(たつ)し傍図画を善し近郷(きんごう)に鳴(な)る一日
大父(たいふ)に会(くわい)して民(たみ)に諭(さと)す所の一巻(いちくわん)を見(み)す大父賢翁(たいふけんおう)
の功(こう)なるをして是(これ)を四方(よも)の民(たみ)にしめさんことを請(うけほ)ふ
翁悦(おきなよろこん)て大父(たいふ)に送(おく)る其条〻此(そのでう〳〵これ)に載夫(のすそれ)人たるもの
一生(いつせう)の間(あいた)に憂(うれい)とすべき事多(ことおゝ)しといへ共其中(どもそのうち)に飢饉(きゝん)
を第(だい)一とせり是(これ)に越(こへ)たる大難(だいなん)はなし昔(むか)しより度〻(どゝ)