翻刻
すべて皆無同然(みななきどうぜん)となりはてければ上下|共穀食(ともこくしよく)
に乏敷(とぼしく)倉稟|空敷(むなしく)して諸人(しよにん)うへに及(およ)ひしかは飢(き)
饉(きん)の大難此時(だいなんこのとき)に至(いた)れりとかなしめる事(こと)のみにて
其なげきの甚(はなはだ)しさ言語(ごんご)にたへし世(よ)となれり
天明(てんめい)三年癸卯七月|朔日(ついたち)より八九日に至(いたつ)て北国(ほつこく)
東国及京都大坂江戸伏見大津辺山谷鳴動(とうごくおよひけうとうおふさかへどふしみおふつへんさんやめいどう)して
殿閣神社堂塔夥敷震動(でんかくじんしやどうとうおひたゝしくしんどう)す諸人肝(しよにんきも)を消(け)し
安堵(あんど)の思(おも)ひをなす事(こと)なし此時北海洋中逆浪(このときほつかいようちうさかなみ)
天(てん)に漲(みなぎ)り往来(わうらい)の商舶多(せうはくおゝ)く漂流(ひやうりう)せり同四日|辰(たつ)の刻(こく)
上州信州(でうしうしんしう)の大地俄(だいぢにわか)に震動(しんどう)して大雷(たいらい)の如(こと)し砂石(しやせき)
降(ふ)り下る事宛(ことあたか)も大|雨(あめ)に似(に)たり六日の夜(よ)に及(およん)で
殊(こと)に甚敷(はなはだしく)七日には白昼闇夜(はくちうあんや)の如(ごと)くにして咫尺(きしやく)
を分堂(わかた)ず人民東西(しんみんとうさい)に迷南北(まよいなんぼく)に奔(はしる)る岩石(がんせき)を空(くう)
中(ちう)に飛(とば)し熱灰(あつばい)を降(ふら)すこと夕立(ゆふだち)の軒端(のきば)を過(すぐ)る
雨(あめ)よりも烈此時信州浅間嶽草津山等同時(はげしこのときしんしうあさまだけくさつやまとうどうじ)に