翻刻
土佐守佐野備前守談合(とさのかみさのびせんのかみだんこう)し与力同心大勢(よりきどうしんおゝぜい)を遣(つかわ)し
彼(か)の賊徒(ぞくと)を追散(おいちら)し所〻(しよ〳〵)に於(おい)て生捕(いけどら)しむ是(これ)に
よつて漸〻静謐(よふ〳〵せいしつ)に及(およ)べり此時西国辺肥州長崎(このときさいこくへんひしうながさき)
及大名衆城下東海道筋宿〻群盗起(およびだいめうしうぜうかとうかいどうすじしゆく〳〵ぐんとうおこつ)て寺院(じいん)并
富家(ふか)に乱入(らんにう)し所〻(しよ〳〵)を狼藉(ろうぜき)す江戸は五月十九日
赤坂田町(あかさかたまち)におゐて町人共大勢馳集(てうにんどもおゝぜいはせあつま)り米店数軒(こめたなすけん)
を討潰(うちつぶ)ス同廿一二日に至(いたつ)て群盗増〻(くんとうます〳〵)江戸中に蜂起(ほうき)
し米店(こめだな)はいふに及(およ)ばず富家大家(ふかたいか)の差別(さべつ)なく昼夜共(ちうやとも)
押入(おしいり)て打破(うちやぶ)り金銀米銭(きん〴〵べいせん)を奪(うば)ひ取衣類道具(とりいるいどうぐ)
を引破(ひきやぶ)り打砕(うちくだ)き大道(たいどう)に投散(なげちら)し或(あるい)は婦女(ふじよ)を犯(おか)
し又は酒家(しゆか)に打入(うちいり)ては酒樽(さけだる)を取出(とりいた)し蓋(ふた)を打抜(うちぬ)き
柄杓(ひしやく)に汲(くん)で是(これ)を呑(の)む其乱妨狼藉目(そのらんぼうろうぜきめ)を驚(おどろ)か
す形勢(げうぜい)なり老若男女東西(ろうにやくなんによとうざい)に泣(なき)き叫(さけ)び南北(なんぼく)
に逃迷(にけまよ)ふ町奉行曲渕甲斐守山村信濃守与力同心(まちぶけうまがりぶちかいのかみやまむらしなのゝかみよりきどうしん)
を遣(つかは)し或(あるい)は自分出馬(じぶんしゆつば)して是(これ)を拒(ふせ)ぐと雖(いへ)とも賊徒(ぞくと)
大勢(おゝぜい)にして降伏(こうふく)する事能(ことあた)はず廿四日より廿八日に