翻刻
救飢方
連年米穀不熟(れんねんべいこくふじゆく)なる時(とき)は辺鄙(へんど)の貧民飢饉(ひんみんきゝん)
に及ふもの少(すく)なからすあわれむべき事にあらすやこゝに
五|穀(こく)を食(しよく)せずして餓死(がつし)を免(まぬ)かるゝ一方あり黒大豆(くろまめ)
五斗大麻子三斗おの〳〵|別(べつ)にして水に入しいなの浮(うか)へる
を去(さ)り能洗(よくあら)ひ蒸籠(せいろう)に入三|遍(へん)むして皮(かわ)を去(さ)ル但(たゞ)シ
むす度(たび)に能(よく)さましてよし扨黒大豆大麻子(さてくろだいづおゝまし)ともに
一ツ臼(うす)に入よくつきませ握(にぎ)り飯程(めしほど)に丸め又せいろふに入
夜の五ツ時より九ツ時迄むし其侭(そのまゝ)火を引|暁(あけ)七ツ時に
いたり取出(とりいだ)しさまし置昼(おきひる)九ツ時日に乾(かわか)し能干(よくひ)たる時
臼(うす)にて細(こま)かにつきくたき粉(こ)となし空腹(くうふく)の節(せつ)人〻|腹(はら)に
満(みつ)る程食(ほどしよく)す其後(そのゝち)は何(なに)にても一切(いつせつ)の食物(くいもの)を食(しよく)する事
を忌(い)む若(もし)口|渇(かわ)き湯水(ゆみつ)を呑(のま)んと欲(ほつ)せは大麻子を
粉(こ)にして白湯(しらゆ)にて少しつゝ|服(ふく)すへし此|薬始(くすりはし)め
一|度服(どふく)すれは七日|飢(う)へず七日過て二|度服(どふく)すれは
四十九日|飢(う)へす四十九日過て三度|服(ふく)すれは三百日