翻刻
扨皮を碓(うす)に入て杵(きね)にてつけはもろく砕(くだく)る也
それを磨(ひきうす)にてひき粘こしすいのふにてふるひ細末(さいまつ)に
する也|皮(かわ)の粉(こ)にしたるを蓋(ふた)の能合(よくあい)たる釜(かま)か鍋(なべ)に水
多く入かきませにへたつ迄|焚釜(たきかま)の蓋(ふた)を取らず明朝(めうあさ)
迄おけは若木の皮にても渋(しぶ)み苦(にが)みもなく匂ひものく
なり扨上水を流(なが)す時|粉(こ)のもれぬ為味そこしの内へ敷(しき)
布(ぬの)を広(ひろ)げて其上へあけ砂(すな)あらはゆりて其布(そのぬの)にて直ニ
しほり餅(もち)又は団子に入るならは干におよはす餅(もち)ならは常の
通り米をこしきに入其上へ松の粉をひろけ米のむせる
を待臼に入てつく也尤手水をひかゆへし蓬抔(よもきなど)入れは
いよ〳〵|能(よき)もの也ませものは麦粟(むきあわ)ひへきみ里芋さつま芋
わらひの根葛(ねくず)の根其外其|土地(とち)にて喰覚(くひおぼ)へたる草木
の類工夫して入へし扨松の粉多く入たるを粥雑炊(かゆぞうすい)
に入てたけはとけてなくなる故たきしまふ前に入て
よし香煎(かうせん)にするにはあくを抜(ぬき)たる粉を日に乾(かわかし)て
炒(いる)也老たる松の皮はあく抜(ぬく)せす炒(いり)てひき半分まぜ