翻刻
り出(いづ)るに係(かゝ)るまた寒帯(かんたい)に在て矮小(わいしやう)なる灌木(くわんほく)を、
此|地(ち)に移(うつ)さば、喬樹(けうじゆ)となるべし、また此帯(このたい)に産(さん)す
る香料(かうりやう)は、温帯(おんたい)人民(じんみん)の食用(しょくよう)に備(そな)ふるに甚(はなは)た大量(たいりやう)
を輸出(ゆしゆつ)す、
温帯(おんたい)の植物(しょくぶつ)、
此|帯(たい)の植物(しょくぶつ)は、夏時(かじ)繁茂(はんも)すといへども、冬候(とうこう)至(いた)れ
ば大約(たいやく)凋残(てうざん)して其|葉(は)を脱落(だつらく)す、しかるに樹(き)を生(せう)
ずる事は衆多(しやうた)にして、槲樹(かしは)ヒツコリー、松樹(まつ)、槻樹(けやき)、
樅樹(もみ)、杉樹(すき)、鷄冠木(かへて)等(とう)あり、また大麦(おほむぎ)、小麦(こむぎ)、燕麦(からすむぎ)、裸麦(はだかむぎ)、
黍(きび)、諸蔬(しよそ)、園草(えんさう)の類(るい)、此|帯(たい)に在て能(よ)く蕃殖(はんしょく)す、また熱(ねつ)
帯(たい)近傍(きんばう)の暖地(だんち)に在て、橙(だい〳〵)、檸檬(まるぶしゆかん)、無花果(いちゞく)、橄欖(かんらん)、甘蔗(かんしよ)、ユ
フィー、米等あり、之を二至(じし)線間(せんかん)の植物(しょくぶつ)と云ふ、
寒帯(かんたい)の植物(しょくぶつ)、
此|地(ち)には殆(ほとん)ど草木(さうもく)の生(せう)ずるなし、只(たゞ)樺樹(かばざくら)、椎樹(しい)、ア
ルトル及び其|他(た)僅(わづ)かの樹類(じゅるい)あるのみ、灌木(くわんぼく)、蘚苔(こけ)
類(るい)、鳳尾草類(ひとつばるい)、石上(せきしやう)に生(せう)ず、野草(やさう)は只(たゞ)夏候(かこう)生(せう)ずるの
み、此|帯(たい)の耕種(こうしゆ)は甚(はなは)だ稀少(きしやう)なり、適(たま〳〵)之あるも年間(ねんかん)
之を廃(はい)する時限(じげん)多(おほ)くして、夏候(かこう)数週日(すうしうじつ)のみなり、